傾国の美丈夫は馴れ合わない
[何を見ているのです](1/9)
講義が終わり、問題が起こる前にさっさと教室を出てしまおうと席を立った。

それに気付き隣でラウが笑顔で「頑張れよー!」と声を掛ける。それに軽く返事をし、マサカズは廊下に出た。


「ちょっと。」

いた。

今朝の小さい男が3人。
不機嫌そうな顔をして立っていた。

ぴしゃん、と音を立てて扉が閉まった。
勿論閉めたのはマサカズだ。

終業のベルが鳴ってから時間はほとんど経っていないというのにいつの間に。

(驚きました……)

どきどきと飛び跳ねる鼓動に、胸を手で押さえた。

後ろでは一部始終を見ていたらしいラウの大きな笑い声が響いている。

「何で閉めるんだよ!」

乱暴に開けられた扉に、やはり無かったことにはならないかと肩を落とした。

本日2度目の「来い」の命令に、マサカズは拒否権がないと分かっていながらもどうにか回避できないか考えた。

「これから予定があるのです。明日の早朝ではいけませんか?」

「は?駄目に決まってるでしょ!黙って着いてきて!」

取り付く島もない。
力で振り切って逃げる事は出来るが、また新たな火種を生むことは明らかだ。

(食材の買い出し…間に合いますでしょうか。)

心に引っかかるのは夕食のこと。
あんなに美味しそうに食べてくれたケディウスの為にもちゃんと料理を作っておきたい。それに一度した約束は守らなくてはならない。こちらの都合が悪いという理由で反故にするなんてあってはならないのだ。

複数人の視線を受けながら辿り着いたのは今朝と同じ廃校舎の教室。

違う所は窓際や扉付近に見知らぬ恰幅の良い男が4人。その誰もがニヤニヤと下品な顔を隠しもしない。



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