傾国の美丈夫は馴れ合わない
[友達は必要ありません](1/11)
ケディウスの後ろを歩く。

夜8時といえども廊下にはチラホラと生徒が見えた。

どれもこちらをマサカズ達を視界に入れるや声を潜めて話し出す。しかし中にはケディウスを見て黄色い声で騒ぐ女子生徒や男子生徒がいる。

ケディウスの顔が驚く程に整っているからだろうか。しかし所々に敵意を含めた視線を感じるのはどうしてだろうとマサカズは不思議に思うが答えは分からない。

そんな生徒に目もくれずケディウスは目的の訓練施設と書かれた厳重な扉の中へ入っていった。



訓練施設は建物内にある訳ではない。
学園付近の小さな森を囲み、誰でもその森の中のモンスターと戦えるようにした場所である。

B級、C級といった低級モンスターが彷徨くこの森だが、レベルが低いモンスターだからといって侮っては大怪我を負う。

つい最近自身の力を過信した生徒が入り、2日後ボロボロの状態で発見されたと風の噂で聞いた。

周囲に人の気配がないことを確認し、刀を抜く。
ケディウスも剣を抜くとマサカズに向き直った。


「宜しくお願いします」
「おう」

瞬間に始まる激しい打ち合い。
ケディウスは恵まれた体格を生かして力強く剣を振るう。対してマサカズは力では敵わない分、素早く回り込み隙を狙う。

辺りには2人の激しい金属音が響く。

ただの手合わせではない。
互いから漏れ出るのは本物の殺気である。ケディウスは地面が抉れる勢いで剣を振るい、マサカズもまた狙うのは首や心臓等の急所。


嫌な予感がして上に飛んだ瞬間、足元の岩が激しい音を上げて崩れた。

「恐ろしい人ですね。足が潰れたらどうするのです」


勿論潰したのは悪どい笑みを浮かべる赤。剣でもなく足で蹴り潰した彼は本当に人間かと疑問に思う。

「心配すんな。そん時は飼ってやるよ、天使サマ」

ぞぞっと背中を走った悪寒に、マサカズは無言で魔法を放った。

突如襲った稲妻にうおっとケディウスは声を上げ避ける。ケディウスが居た場所には焦げた地面が黒い煙を上げていた。

「殺す気かテメェ」

「条件反射です。」

「恐ろしい奴だな。」

貴方に言われたくはないと、返事の代わりに再び魔法を放った。


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