魔 獣 の 姫
番人の戯れ事(1/22)
「…………うぅ〜…あと少しぃ……」
穏やかな日差しが窓から入り、小さな背中を照らす。
ここはとある部屋。
大きな机にはたくさんの文字が書かれた紙をお供に、時折言葉をもらしながらペンを走らせている少女の姿。
魔獣棟3階の書斎で唯一使用できる人物、シエルだ。
キトラや砦の人たちと別れを告げロストリア城に帰ってきたのは昨日。
そして今日は朝から一人、書斎にこもり書くのを忘れていた報告書に没頭している。
「……リズとルトがいないから寂しいなぁ…うぅ、でも…あとちょっと……」
シエルの使い魔たちは、窓辺でこんなに暖かな日差しなのに中にいるのは勿体無い
というか外で遊びたそうにしていたので、行ってきたらと声をかけたのだ。
そして二人は目を輝かせすぐ直行
で、今の状況に至る。
カリカリとペンを走らせては、一旦休みまたペンを走らせるのを繰り返す。
「…っ、よーーーっし!!終わったぁ!!」
数十分後ようやく終わり、シエルは椅子にもたれかかりながら窓の外を見る。
気持ちよさそうにリズとルトが魔獣たちと遊んでいるのが見え実に微笑ましい。
外から視線を中へと向けちらりと報告書の方を見て、昨日までの出来事を振り返る。
「黒魔法か……私、まだまだ魔法について理解できてないんだね…」
報告書の内容は、魔獣の案件と黒魔法の案件について。
今回の任務は黒魔法の出現を確認し、実際に接触。
黒魔法にかけられた草木たちは、結界で周りと遮断することで一時解決したが、いつまでもあの状況のままではいけないだろう。
そして、黒魔法がもたらす魔獣や人への被害。
特に魔獣への被害は、シエルが一番しっかりしていないといけないというのを面と向かって言われたような出来事だった。
唯一、魔獣とのつながりを持つ人物。
魔獣たちの上に立つ人物。
そんなのは自分しかいない。自分が守らなければ。
シエルは肺にあった空気を全てだし、新たな空気を取り込みながら、机の一番手前の引き出しに手をかざし、魔法で鍵を開ける。
そこから出したのは、表紙すべてが真っ白な本。
以前アニスから渡され、自室に置いていたものだが、この間この書斎に持ってきていた。
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