透き通る灰色
偽装 11/11
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「本当は、水瀬くんにチョコ作ってきてたの」
「うん」
「すぐ渡せば良かったのに、渡せなかった。
ごめんね、私が悪い」
「全然」
「放課後渡そうと思ったんだけど、多分どこかに置き忘れてきてなくしちゃって」
「うわ、ショック(笑)」
本当のことを話すと、水瀬くんは「ありがとう」と言って笑った。
つくづく自分が馬鹿だったと実感した。
「みんな袋だったのに、俺だけ箱」
「?」
「期待してもいいよね」
自分に言い聞かせるようにしてそう言ったあと、水瀬くんは私の名前を呼んだ。
「もう一度、やり直すね」
真剣な顔に、ドキッとした。
瞬間、全身が心臓になったみたいに、ドキドキという鼓動で私は埋め尽くされる。
「千名さんが好きです」
鼓動に、水瀬くんの声が重なる。
「付き合って下さい」
水瀬くんの視線が、声が、温度が、
熱くて、熱くて、堪らない。
呼吸もままならないほど、苦しかった。
だけど、涙が出るほど、嬉しかった。
私も水瀬くんが、好き。
心からそう思える。
「うん」と頷くと、水瀬くんは一瞬驚いた後、くしゃっと笑った。
特別なバレンタインの日。
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