(BL)アナタとワタシのハッピーエンド
[呼ぶ名前1](1/2)
「早い時間から泳いでんな」
本を手に薄く笑うナオミがいた
「うん
………濡れるよ」
構わずにサンダルも服の裾も濡らし
ナオミが義希のすぐ傍に歩み寄る
激しく胸が鼓動を打ち鳴らして
極度の緊張に目を閉じる
その、耳元
「好きだ」
低く、甘い声音が囁いた
目から涙を溢して唇を震わせる
「俺は、嫌いだ…」
ナオミの指先が首筋の達也の跡をなぞる
ピクリと義希の体が揺れて
頭の隅の嫉妬を感じながら
ナオミはそこに舌を這わせた
「…閉じ込めて、欲しいだろ?
繋がれてたいだろ?義希…」
酷く甘い誘惑に
義希は縋るようにナオミの服の端に指を掛ける
「もう、昔みたく優しくなんて出来ねぇよ
お前が俺を抉じ開けたんだ…」
自分の内に黒く汚れた感情を見つけた
それは義希の笑顔を歪めたいと思った日常から
丁度その頃面白い女と出会った
…だから、今なら離れる事が出来るかも…
安易な考えだと気付いたのは達也のせい
そしてバカみたいに翻弄された義希のせい…
体が触れる程の距離で
ナオミは痛みともう手放せなくなる予感と理性で
「今なら、まだ、突き放されてやれるよ?」
最後の選択肢を渡して寄越す
義希は顔をあげて真っ直ぐにナオミを見て
口を開きかけて、やっぱり泣いた
「ど、して
そんな風に…ッ」
義希の肩に顔を乗せてナオミが喉の奥で笑う
「泣かせたいからだよ
俺のせいで、泣けよ」
頬に触れて引き寄せられて
キスをした
深く激しいキスをした
逃れられないその腕に
あの日堕ちた深海を見る
呼吸の儘ならない
傷を抉る日常へ…
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