mtanpen
XXX[アパート](1/4)
ようやく一人暮らしを始めることになった。
荷物運びまでまだ時間があり、新しい部屋の中は閑散としている。
郵便受けを見ていると、右隣の部屋のドアが開いた。
「こんにちはー」女が俺を見て言う。
少しだけ年下かと思われる。それなりに可愛い。
「ああ。引っ越してきた者です」
「あ、そうなんですか! 初めまして、飯田です」女は名乗ると、俺の足元の方を指さす。
「それ、手伝いますよ」ダンボール箱二つ。必要なものが入っているから先に持ってきた。
二人で一箱、二往復した。
「どうも」
「これからよろしくお願いします」
さらさらな長髪と、白いTシャツの、汚れなき女子大生。麻里、飯田麻里に別れを告げ、家に入った。
しかし荷物はまだ必要無かったので、ガムテープだけ剥がしてそのままにしておく。もしかすると左隣にもいい女が住んでいるかもしれない、と勘が働いた。
左隣の部屋のインターホンを押すと、中から今度は俺と同い年ぐらいの女が出てきた。彼女もなかなかのものだ。ショーパンから見える太ももがいとしい。
「新しく来た人!?」
随分馴れ馴れしい言い方だ。少し不愉快になった。その女の歓喜の声に合わせ、部屋の奥からもう一人女が出てきた。表札に名前は一つしかなかった。だから友人か何かだろう。
「こんにちわー!」
もう一人の女も女で声がでかい。類は友を呼ぶ。こちらはまあ普通か。
「私、ユリっていいまーす!」友人のほうが自己主張してきた。
部屋主の怜奈とともに、今日は三人の名前を覚えた。
「背高いっすねー!」
「そうかな」
そのまま少し立ち話をした。足が疲れてきたので帰る。
「じゃあまた。困ったらいつでも来てよ」
そう言い残して俺は部屋に帰った。自分の部屋のドアを閉め、腰をおろしていると、隣の部屋からうっすら声がする。
「超かっこいー!」
「やばかったよね」
やはり自分の容姿を褒められる瞬間は喜びがこぼれる。
ははは。いいところに来た。右にはいじらしい少女、左には抱き頃のギャルで。
と言っても、実際のところ俺には彼女がいるから、いきなり部屋に来られても困るんだが。

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