弐の姫
婚約者(1/12)
一目惚れだった。
父に突然『弐の姫の婚約者となった』と言われた時は、正直面倒なことになったとしか思わなかった。
何故次期女王と謳われる壱の姫ではなく、弐の姫なのか、と。
しかもあの忌み子達と親しい間柄らしく、一つ屋根の下ならぬ一つ塔の中で暮らしていたらしい。
別に壱の姫に特別な感情がある訳でも、天馬将軍のようにあの二人に恨みがあるわけでもないが……。
抗議を挙げたくても女王陛下直々の命令ならば断れる筈もない。
そこに俺の意思や弐の姫の意思など必要なかった。
必要なのは弐の姫と女王直系の次期公爵との婚約、という事実だけ。
弐の姫が女王となるか?
壱の姫に敗れ想造世界に強制送還されるか?
そんな未来は関係なく、また俺自身興味はない。
女王陛下の勅命だから諦めるしかない。
コレは簡潔に言うなら政略結婚………いや政略婚約なのだから。
弐の姫も甘い関係など望んでいないだろうし、俺もそんな下らない関係はごめんだ。
淡白で素っ気ない関係でいい。
そう思いながら父に連れられ、会いに行った彼女に………
蓮姫に一目で心奪われた。
彼女の為に生きたい。
形だけの婚約者ではなく、彼女を支えたいと思った。
想造世界になんて帰らないでほしい。
この命尽きる迄ずっと共に生きていきたい。
婚約の話を聞いた時は面倒だと、仕方ないと、軽く恨みそうだった父と女王陛下に
彼女に………蓮姫に会った途端、俺は心の中で深く感謝した。
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