東海の片隅で
[-劫火の英雄- 08.現実](1/12)
08.現実
「……っ」
暗闇に落ちていた意識が浮上する。
「ここは…」
顔を上げてすぐに重厚な鉄格子が目に入った。
目の前には鈍い色をした堅固な格子。取り囲むのは古く寂れた石造りの壁。
その様子から察するにどうやらここは城の地下牢のようだった。
レイズは酷く困惑し混乱していた。
またしても目の前に食い逃げ犯の男を追い、地下の水路のような所へと入っていくと、その先には何かの研究施設のようなものが存在した。
そこでは囚人が拘束され、白衣を纏った者達が、囚人が炎に焼かれる様子を観察していた。
堪らずその場へと飛び出して、白衣の者達を問い詰めた所で、国王の紋章を携えた国王直属の騎士部隊がやって来て…
レイズの意識はそこで途絶えた。
どうしてあんな場所に国王軍が…
ぐるぐると先程見た光景が頭の中で回り、疑問が更に疑問を生んでいく。
「あーあ、捕まってるのか」
そこにまたしても聞きたくもない声が響いた。
その声に地に落としていた視線を上げれば、そこにはやはりあの食い逃げ犯の姿があった。
「…何しに来た?」
「何って、そりゃあ負け犬の顔を拝みにだよ」
「…ほんといい趣味してるな、アンタ」
「それはどうも」
悪態を吐くレイズに対し、男は肩をすくめてみせる。
「そのざま、父親とは大違いだな」
「……俺はあの人とは違う」
男の言葉にレイズは深く項垂れた。
書き直し 2018/04/10.shiro.
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