Dearest

君の好きなところ(1/6)







飯塚 心(イイヅカ ココロ)17歳。

私の人生の1番の大事件は、半年前の、ある人との出会いだった。

耳に心地よく響く声に、綺麗な指。
背も高くて、脚も長い。
少しだけウェーブがかった茶色い髪は、垢抜けた雰囲気を醸し出している。
その出会いが、平凡だった私の世界を、生活を、一気に変えてしまった。


彼は、私には到底釣り合わない人で、最初は少し警戒していたというかビクビクしていたと言うほうが正しいかもしれない。
だけど、一緒にいる時間が長くなり、性格を知っていく度に、彼のことを考える時間がみるみるうちに増えた。
親しくなるまでは知らなかった、低くて甘い声とか、触れる手がとても優しいこととか、その全てに気持ちを持っていかれたのだ。


「心おはようー」


教室に入ると、私の一番の友達の美亜が私を待ち構えていた。
モデルみたいにスラっと長い脚に、高校生じゃないみたいに大人っぽい顔立ちをしているからか、よく一緒に出かけると姉妹に間違えられる。

私は元々、友達作りがあまり上手ではなく、超がつくほどの人見知りだ。
そんな私に、最初に声をかけてくれたのは美亜だった。
尊敬してるし、憧れでもある。


「心おはよ」
「おはよ、拓くん」


美亜の隣に座って、一緒にスマホの画面を覗き込んでいた拓真くんが顔を上げた。
拓くんと美亜は付き合っていて、二人は私の憧れのカップルでもある。
私から見た拓くんは、美亜と同じくやっぱりお兄ちゃんかなあ。


勉強は苦手で、もちろん好きではないし、部活にもしていない私は特に充実した高校生活を送っているわけではないけれど、何より美亜や拓くん、唯人と過ごす毎日が楽しかった。















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