地獄にいるきみへ
[焦熱](1/8)
焦熱
母に有栖を紹介すると、彼女はその場で泣き崩れた。
本当に嬉しい、うちの子をどうぞよろしく、いつでも遊びに来て、ってな具合に。
有栖は笑って応えて、なんか知らないけど母と連絡先を交換していた。
それから顔を引き締めて、
門限があるのは知っているけれど、次の休みは記念日だから二人で遠出がしたい。遅くなるけれど許可を貰えないかと言った。
母は二つ返事で了承し、お小遣いもあげるからと有栖の肩を叩いた。
一連のやりとりを隣で眺めてはいたけれど
どうも胡散臭く見えて感情移入できなかった。
この二人は誰のことを言っているのだろう、
決められたセリフを吐いて、なんだか作り物みたいだ、
心配でしたらいつでも連絡をくださいという有栖。
ありがとう、本当によく出来たいい子ねという母。
両者ともあたしのことを思ってくれている。全く違うベクトルで。
それは理解できるのだけれど、
どこか他人事のまま、終始嬉しそうに笑い合う歪な光景を眺めた。
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