◆白・黒・灰色 (1/1)
自分の中に眠る色。
まだ私はSEVENにとって幼なじみ?
どうかな…
でも,またSEVENに近づく事ができて凄く嬉しい。
いつも心配してメールしてたから願いが叶ったのかな。
SEVEN「なんか今日は人が多いね…。ちょっと苦手かな(笑)」
怜香「やっぱり日曜日は多いよね(笑)私もあまり人混みは苦手だよ。」
私も同じ。
SEVENと同じだよ。
昔からそうだったよね。
変わらない(笑)
久しぶりに見る私服姿のSEVENは,私の思い描いていたよりもかっこよくて…そばにいるだけで心臓が止まりそうなぐらい鼓動が早くなっていた。
SEVEN「さっ…行こ♪」
怜香「うん!!」
私たちは楽しく会話をしながら,モールの3階にある映画館へと向かった。
SEVEN「『DISAPPEAR』の字幕で。」
SEVENが見たがってた映画。
行きたいって言ってくれた時は自分の部屋の中で飛び上がるぐらい喜んじゃった。
変だよね,幼なじみなのに(笑)
そんな事を思いながら店員さんと話すSEVENの姿を,ドキドキしながら少しだけ眺める私。
店員「『DISAPPEAR』の字幕ですね。今からですと上映開始時間が12時30分になりますがよろしいですか?」
SEVEN「はい。」
映画なんて久しぶり。
しかもSEVENとだから特に幸せ。
彼の横顔を少しだけ見ながら,私は嬉しさを隠す様に下を向いた。
今,何を考えてるのかな…
店員「席はどうされますか?カップルシートもありますが。」
カップルシート…
SEVEN「普通の席で♪」
だよね。
期待しすぎだよ。
私たちは映画のチケットを片手に持って,入口で待っていた。待つ間の時間も長く感じない。やっぱり好きな人と一緒にいると時間なんて忘れちゃう。
そんな中で私はできるだけたくさんSEVENと会話をしていく。それは今までの分を取り戻す様に。
でも…
会話をしていく度に,ある人の名前が出ている事に気づいたんだ。
SEVEN「俺がいない間に面白い奴がいるなんて知らなかった♪やっぱりあの転入生は変わってる。あの偏屈男の圭介と仲良くなってるんだから(笑)」
楽しそうに笑顔で話す彼。
怜香「うん(笑)」
なんで咲の話なんてするの?
いつの間に仲良くなったの?
そんなに咲が気になる?
私は?
疑問が溢れる様に心を支配していく。
SEVEN「でも,まさか怜香と咲ちゃんが友達になってるなんてね。でも怜香が友達なら俺も安心だよ♪」
私が友達で安心?
その瞬間に結菜の事を思い出して手が震えていた。
…………………………………………………
こんなはずじゃなかった。
結菜「ねぇ…怜香!!!違うって言ってよ!!!」
教室中に響き渡る結菜の声。
村上「佐藤さん,本当なんですか?」
こんなはずじゃなかった。
怜香「私は…結菜の言ってる事なんて知らない。彼女がルールを破ろって私に言ったから。」
こんなはずじゃなかった。
村上「じゃあ,ルールを守れなかったのは彼女のせいなんですね?」
怜香「そう…。」
結菜「嘘だよ!!!私は怜香を助けようとしてんだよ!!!なんで裏切るの!!!酷すぎるよ!!!!」
でも…
こうする事でしか自分を守れなかったんだ。
結菜「裏切り者!!!!」
私の手が真っ黒に染まり,自分の傷さえ癒すために震えた体を止めさせる。
怜香「もう私に付き纏わないで!!!」
ここで終われば,SEVENとの関係だって壊れてしまう。
これが正しい答えなんだよ。
必要なのは正義じゃないから…
結菜「卑怯だよ…マジで……。」
…………………………………………………
やめてよ…
こんな時まで出てこないで!!!
SEVEN「怜香…どうかした?」
怜香「だ,大丈夫(笑)」
お願い
今は出てこないで。
SEVENの前では見せたくないの。
無理に笑顔を作ろうとしても,表情が引き攣っていくのを感じる私。
ダメだって…
もう黒で塗り潰された過去の私は終わったんだから。今は元の真っ白な私なの。新しく始めるためにまた戻った私。
だから…
店員「12時30分上映開始の『DISAPPEAR』の字幕を御覧の方はチケットを………
入口に立っていた店員さんがアナウンスを始めて,気まずい自分を振り切る様にして私たちも上映される番号の映画館へと入っていった。
映画が始まると私は内容なんて一切頭には入らずに,結菜の事を忘れてSEVENと咲との関係を気にしていた。
彼の横顔さえ見れないまま,暗闇の中で映画の光だけが私を照らす。
ずっと私はSEVENの近くにいた。小さい頃からずっと。だから私が1番,彼の事をわかるはずだよ。
SEVENはまだ私の気持ちがわからないのかな。
ずっと好きだった気持ちを。
怜香「………。」
篠山 咲…
まさか違うよね。
SEVENの心に咲が入ってたりしないよね。
普段から皆に優しくするSEVENだから,ただ会話の中での話題の一つなんだよね。
そうやって自分に言い聞かせても
気になって
気になって
どうしようもなくなる私。
咲は私の知らない事まで知ってたし,仲良く帰る姿さえ見てしまった。私は高校になってからSEVENと一緒に帰る事なんてほとんどなかったのに。
違うよね。
しばらくして映画が終わりを告げ,エンドロールが流れる中で私とSEVENは映画館を出た。
モール内で昼ご飯を一緒に食べて,賑わう街中を歩きながら買い物やプリクラを撮ったりしながら楽しく過ごしていく。
そして…
夜になって帰りの電車に乗って地元の駅に着いた頃…
人が少なくなった駅前で,別れ際にSEVENが私に言ったんだ。
SEVEN「今日は楽しかったよ♪見たかった映画も見れたしさ。」
怜香「私も(笑)また今度も遊ぼ。昔みたいに。ダメかな…」
ドキドキする気持ちを抑えながら勇気を振り絞って出た言葉。
SEVEN「………。」
ドクッ…
ドクッ…
ドクッ…
ドクッ…
でも…
SEVENは悲しい表情をして,私に言いにくそうに話していく。
SEVEN「なんか,怜香って変わったよね。」
怜香「えっ…。」
タクシーの走る音が横切る中,私の時間が止まった気がした。
SEVEN「昔はさ,もっと自然に笑い合えた様な気がする。もちろん今日遊んで楽しかったのは嘘じゃない。でも,なんか違う。怜香の俺を見る目が…」
怜香「そんな事ないよ。ほら,私たちも高校生になったからだよ(笑)」
動揺しながら必死に答える私。
SEVEN「俺は昔の怜香が好きだったな。じゃあ,また明日…学校で。」
歩き去る彼の姿を見ながら…
ポタッ…
私は
ポタッ…
目から大粒の涙が地面に落ちていった。
怜香「昔の私って何…?」
ずっとずっとそばで好きな気持ちを我慢して
それでも好きで
クラスのルールもSEVENと一緒にいられると思って守ってきたのに
それなのにあなたは離れてしまう。
どうして?
SEVENには好きな人がいるの?
もしかして…
咲じゃないよね。
私はその場でしゃがみ込み,大声で泣いた。
通行人が私を見ていく中,鞄からプリクラを取り出して泣きながら自分を見たんだ。
そして,気づいていく。
私がもう白でも黒でもない色になっていた事を。
それでも私は強く願う。
プリクラに写ったSEVENの顔に涙を落としながら…
奪わないで
私の唯一大切なものを。
お願いだから…
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