◆佐藤 怜香〈サトウ レイカ〉 (1/1)
私は自分勝手で卑屈な人間。
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日曜日。
私は洋服を選びながら鼻唄を歌う。
ウキウキした気持ちは,久しぶりにSEVENと遊べるから。
どれだけこの日を待ったのかな。
鏡を見ながら私の好きなモデルさんの様なメイクをして,LIZ LISAの洋服を着こなし1番可愛い私に生まれ変わる。
普段の私ならしないけど…それは恋という魔法にかかった自分が,好きな人のために会う短い時間を可愛くいるために。
少しでも違う私を見せたいから。
剣 「ねぇーちゃん,今日はご機嫌だな(笑)」
怜香「あっ!また勝手に部屋に入ってる!!出てって。」
剣は私の一つ違いの弟。
日頃はイライラする弟だけど,今日はちょっと違う。
SEVENに会えるからかな。
剣 「へぇ〜い(笑)」
怜香「もうマジで最悪…。」
弟が部屋を出た後,私は出かける準備をして玄関でブーツを履いた。
怜香「よし。10時だよね…。」
携帯のメールを確認して玄関のドアをゆっくり開けた瞬間だった。
結菜「おはよ…。」
私はあまりの状況に立ち尽くす。
なんで結菜が私の家の前にいるの?
[ガチャ…]
玄関のドアの閉まる音が悲しく響くんだ。
怜香「話す事なんてないから…。」
そう言って歩き出す私。
それを制止させる様に立ち塞がる結菜。
結菜「そう…。でも私にはあるんだよね。」
怜香「マジでやめてよ。」
睨みつけながら私は言う。
過去の呪縛から逃れたい気持ちでいっぱいだったから。
結菜「今からSEVENに会いに行くの?いいね(笑)楽しそうで。」
怜香「関係ないでしょ!!!もう私と結菜は終わったの!!!出てこないでよ!!!」
結菜「捨てといてそれはないよ。私は信じてたんだよ。」
もう気が狂いそうだった。
思い出したくない。
また私が私でなくなる。
結菜「今度は私の変わりに篠山さんって言う転入生なの?どうせまたゴミの様に捨てて自分を守るんだよね。」
私を苛つかせる。
やっと自分を取り戻せたのに!!!
コイツがいるから全てがまだ過去のままになるんだ!!!
怜香「あんたなんか最初から友達じゃなかった!!!病院で早く治してもらったほうがいいんじゃない?鬱病だから過去にすがるしか生きる方法がないんだよ!!!もう私の前に現れないで!!!マジでウザいから!!!」
私の言葉がナイフの様に結菜に突き刺さる。でも,罪悪感なんて感じない。もう私は結菜という存在を消していたから。
結菜「酷いよ…。私はずっと,ずっと怜香を信じていたのに!!!馬鹿言わないでよ!!!」
怜香「私は友達よりルールを守る。馬鹿なのはあんただよ。」
涙を流す顔さえ見たくない。
私は結菜の肩を強く手で退かして,歩いていった。
結菜「もう死んでやる!!!」
後ろから聞こえる叫び声に私は…
怜香「勝手にすれば…。」
私は振り返る事なく駅へと歩いていったんだ。
私は自分のためにしたんじゃない。
自分の愛のためにした。
だから間違いなんて言わせない。
それが私だから。
汚れた過去はもういらないの。
駅から電車に乗り,都市部に降りると大型ショッピングモールで待ち合わせの場所に到着する。
さっきの事は忘れて,私は時計を見ながらドキドキしていた。
9時50分…
まだかな。
休日の行き交う人々を見ながら,私は彼が来るのを心待ちにして待っていた。
SEVEN「怜香♪早いね(笑)」
怜香「よかったぁ…(笑)来てくれないかと思った。」
SEVENが日曜日に私の目の前にいる。
それだけで幸せな気持ちになって,自然と笑顔がこぼれ落ちていくんだ。
SEVEN「なんか2人で遊ぶのも久しぶりだね。怜香もいつもと雰囲気がちょっと違うし。」
気づいてくれたかな。
私はSEVENのために頑張ったんだよ。
あなただけのために…
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