6×6BLOCK


◆涙の選択肢 (1/1)

守るべきもの…それは自分か,それとも相手か。





白波と西島くんが喧嘩!?


私はその事実に困惑していく。


なんでそんな事になったのかさえわからない。





[ブー…ブー…ブー…ブー…。]





そんな中で教室中に携帯のバイブ音が鳴り響いていく。


私は自分の携帯かと勘違いして,ポケットから取り出してみたんだ。


でも,やっぱり私の携帯じゃなかった。



そして…


教室の中が一気に静まりかえり


その静けさを不思議に思った私は周りを見渡した。



咲 「………。」



私はその光景に目を疑ったんだ。



クラスメート全員が携帯を見て静まりかえってる。



その時,私は思った。



きっとクラスメートたちに,あの暗号メールが届いているんだって…





程なくして,昼休みが終わりを告げて午後の授業が始まる。もちろん白波と西島くんが喧嘩をしたという事で授業が変更になり,緊急のホームルームの時間へと変わっていた。


昼休みに姿が見えなかった白波も西島くんも教室に戻ってくる。


白波は苛立ちを隠せない様に席に座り,西島くんには顔に手当てされた痛々しい傷が見えた。


私はまだ困惑したままその光景を見ているしかできなかった。



そして…


村上さんが吉武先生の横に立ち,嫌な空気が張り詰める中でホームルームが始まる。



先生「皆も知ってるかもしれないが,白波と西島が体育館の裏で喧嘩をしていた。まさかうちみたいな優秀でイジメのない2ーAがこんな事になるなんて先生も信じれない。本当に残念だよ。私が見つけなかったら大事になっていた。まだ学校には,この事を話してはいない。それは先生が君たちを信頼してるからだ。」



先生が話す一言一言を聞き,緊張感を肌で感じる。



先生「お互いの話を聞いてみたが意見が食い違ってて,先生もわからなくてな。クラスの中で事情を知ってるやつはいるか?」



皆が静まりかえり,同じ姿勢のまま視線を先生の方に集中していく。


その姿は…


まるで夢で見た景色の様に。



康太「俺は何も悪くない!!!あいつが急に難癖つけて殴りかかってきたんだ!!!」



席を立ち上がり,白波を指差して訴える西島くん。



圭介「黙ってろクソが…テメェに聞いてねぇーんだよ。」



西島くんと顔を合わさないまま苛立つ表情で言う白波。



白波が何で喧嘩なんて…



先生「もうやめろ。喧嘩の続きをココでまたする気なのか?こうなった以上,詳しい事情を白波や西島の両親にも話さないといけない。まぁ,白波は両親がいないから別だが。」


白波「………。」



白波は両親がいない?



先生「わかるやつはいないのか?」



先生がそう皆に言った時…


黙って見つめていた水川さんが手を挙げたんだ。



先生「水川…何か知ってるのか?」


ロサ「はい。皆も多分知ってると思うけど,白波くんは何も悪くないですよ。西島くんは日頃から白波くんを嫌ってて,休み時間になるとおちょくる様に悪口を言ってたのを見たことがあります。それでも白波くんは2ーAを汚さないために,西島くんから悪口を言われてもずっと我慢してたみたいだけど…。でも最近はそれが酷くなって,両親がいない事まで言ってました。」


「あぁ,そうだよ。」


「あったあった。」


「あれはさすがに最低だよね。」


「マジで酷いよ。」



ロサ「それが我慢できなくて白波くんは西島くんを殴ったんじゃないですか?」



う,嘘だよ。


そんな事あるわけない!!!


西島くんが休み時間にそんな事してるなんて見たことないよ!!!


なんで水川さんは平気で嘘をつくの!?


皆もおかしいよ!!!



先生「知らなかったな…。白波,本当なのか?」



圭介「……あぁ。」



なんで白波まで…



康太「な,なんだよそれ…。やっぱりそうなるんだよな…。」



それを聞いた西島くんが突然涙を流し,震えながら歯を食いしばっていた。


私はそれを見て苦しくなっていく。



先生「村上も知ってるのか?」


村上「はい。西島くんにはずっと言ってきたんですが,なかなか聞いてくれなくて。」



西島くんの味方がいなくなった瞬間だった。


私にも前の学校で同じ様な経験をしてるからわかるんだ。



こんな事,絶対間違ってるよ!!!


石上くんの時もそうだったけど,今度は皆でそうやって事実を曲げるなんて!!!


思わず私が立ち上がろうとした時,西島くんが私を見て目で合図する。



[余計な事はしたらダメだ]



そう言ってるかの様に下ろした左手を制止させるそぶりを隠す様に見せた。



でも!!!





先生「西島,本当なのか?」


康太「はい。俺が悪いんです。水川が言った事も間違ってません。」


ロサ「ほら…本当でしょ?」





なんで認めるの!!!


ダメだよ!!!


石上くんを助けたいんでしょ!!!


なんで逃げるの!!!



先生「そうか…。じゃあ,さっき西島が言っていた事は嘘なんだな?」



私の口から言葉が今にも飛びだしそうになっていた。



それでも西島くんは…





康太「は…はい。」





そう震えながら言った。




そして,泣きながら西島くんが言う背中を見て思ったんだ。



違う…



逃げてるんじゃない。



クラスにある闇から私を守ろうとしてるんだって。



先生「わかった。じゃあ白波と西島,ちょっと先生について来てくれ。」



白波と西島くんが先生の呼びかけに応える様に教室から出ていく。



先生「この時間はホームルームに使っていいぞ。あとは村上に任せるからな。」


村上「はい。」





[ガラガラ…バタンッ!!]





私の選択肢は,もう消えていた。



そして…



逃げていたのが自分だと悟っていたんだ。



利香の過去があって何をしたってダメだって勝手に思って,勇気が出なかった自分なんだよ。



私が逃げてる。



また…



そんな私は謎を知るためにクラスに馴染む事を優先して,西島くんを守らなかったんだ。





村上「では,自己評価の回収を始めます。」





手を強く握りしめたまま,私は自分を憎む様に苦しんでいく。



西島くんは私に打ち明けてくれたのに!!!



間違いだって思う人がいたのに!!!



友達を救おうとしてたのに!!!



なんで私は勇気がでないの!!!



どうして!!!



咲 「………。」



クラスにある闇がきっと皆を動かしてる。


だけど…


何が正しいのかわからない。





でもこれだけはわかるよ。



本当に強いのは…



きっと西島くんみたいな人なんだよね。



涙が自然に私の瞳から溢れていた。



それは…



西島くんが見せたもの…それが自己犠牲という名の勇気だと知ったから。


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