6×6BLOCK


◆ASSIMIATION (1/1)

同化する私。





あの後,私は早坂さんと軽く挨拶を交わして自宅に帰ってきていた。そして,リビングで母親に嫌みを言われながら買ってきたスイーツを食べる私。



母親「夜ご飯も食べないで,そんな甘いものを食べて…ダイエットしてるなんて嘘ね。」


咲 「今日はいいの。」



母親の言葉にも耳を貸さずにスプーンを口に運ぶ私。



母親「咲,明日はちゃんと夜ご飯を食べなさいよ。お父さんだって心配してるんだから。」


咲 「もぅ〜わかったって。しつこいよ。」



自分の言葉とは裏腹に,本当はママに凄く感謝してるんだよ。


私にはイジメの事なんて絶対に聞かないし,私が前の学校で傷だらけになっていたのを見て何も言わずにすぐ転校させてくれたママ。


少なくとも私が生きてるのはママのおかげだってわかってる。


だから,本当はもっと優しくするべきなんだよね。


素直じゃなくてごめんね。



母親「早くお風呂に入りなさいよ。」


咲 「うん。後でね。」



だからこそ今の学校がダメなんて言えない。


もう私は逃げずに頑張らなきゃいけないから。



母親「学校はどうなの?だいぶ日にちは経ってるけど。」



ママがキッチンで洗い物をしながら何気ない雰囲気で私に言った。



咲 「うん。大丈夫だよ。なんとか慣れてきたし。」


母親「そう…。」



ママはそれ以上聞く事はなかった。


わかってる。


それがママの優しさだって事も。



母親「これが終わったら,お母さん先にお風呂に入るからね。1番じゃないって文句言わないでよ。」


咲 「は〜い。」



ママが浴室に行く中で,私はスプーンを口にくわえながらボーッとテレビを眺めていた。


そして,早坂さんの言っていた事を思い出す。



自己評価の提出日が明日…


しかも水川さんと白波が付き合ってたなんて…


ビックリだよ。



私はクラスにまだ馴染めないままで…


闇を知る事が出来るのかな?



そんな私にテレビの音声が自然と耳に入ってきたんだ。





[この辺境の地の住民にとって別の人間が現れた事は警戒心を強くさせる。それでも女優,南波舞は村長や村人たちと暮らしながら心を通わせ,ここで自然と生活できる様になった。南波舞のその姿勢はこの地の住民にもしっかり伝わって,彼らの警戒心を解く事となる。]



[南波『正直,日本という国に慣れてしまってる私からすると…大変ですけど(笑)でも,ここの世界を理解して…そして,自分の価値観を捨てて生活する事で,この地に住む人々の生き方や心を見る事が出来たって感じですかね(笑)やっぱり世界は広いです。』]





よくテレビの化粧品のCMで見かける南波舞。



咲 「あんなに可愛いのに…」



電気やガスもない先住民と共に生活して,あんなに笑顔でいられる彼女を見てると…自分が情けなくなってくるんだ。


私は学校という自分の国の中でさえ馴染めてない。


おかしいよね…


これは私に伝えてるのかな。


あの2ーAの闇を知るには,きっと変な行動をしても警戒心を強くするだけ?





[南波『この世界の中に入ってみないと絶対わからないと思いますよ。』]





あの2ーAというクラスの中に入らないとわからない…



私はテレビで見ている映像とリンクする様に自分の事と重ね合わせていた。



深く知るには…



スプーンを口から放し,何かを感じていた。



このままなら知りたい事もわからないままかもしれない。あのクラスの事を深く知るには,あのクラスの一員にならないといけない。



きっとそうだよ。



私はスイーツのカップとスプーンをごみ箱に捨てて,2階の自分の部屋へと上がっていった。





自己評価…



私は机にむかい,学校の鞄から自己評価の紙を取り出した。



咲 「あのクラスの中へ入る事が出来たら,きっと謎もわかるはずだよね。なら…」



やるべき事は決まってる。


2ーAに溶け込む事が必要なんだ。



私はシャーペンを握り,自己評価の紙に記入していく。





[自己評価]


[評価対象・滝沢 優里]


[勉強も真面目に取り組んでいて,授業も真剣に聞いている。休み時間は小説を読んでいる姿が見られて…………………





自分の事で精一杯だった私だけど,滝沢さんの自己評価をしっかり書いていく。


それはあのクラスに同化するため。


『天の目』ってものが私を見ているなら,わかるはずだよね。


明日から,私があのクラスの一部になるために行動する姿を。


そうすればきっとわかるはず。


あのクラスの闇も,作った人物も。



そして,石上くんみたいな被害者が出ない様にできるはずなんだ。



きっと…



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