6×6BLOCK


◆嘘 or 真実 (1/1)

咲は知る。嘘と真実の狭間に立っている事を。





次の日の朝。



私は学校に行く準備を済ませて,いつも通りの時間に家を出た。


昨日の事であの教室に向かうのは勇気がいるけど,でも…石上くんみたいな人がいる現実を知るとどうしても前に進んでしまう私。


清水くんみたいな人は正直ムカつくし,それにあの間違ったクラスを変えたいなんて馬鹿な考えまで私の中で生まれちゃってて…



とにかく私にできる事はしてみたい。



それが私だから。



後悔しないためにも…








怜香「咲,おはよ。」



通学途中で怜香と合流する。


でも,どことなく今日のレイは元気がない様に見えた。



咲 「おはよ。」


怜香「今日は天気がいいねぇ〜(笑)でも寒くて布団から中々出られなかったよ。」



いつものレイの笑顔。


勘違いかな…



咲 「そうだね(笑)」



朝日が道路を照らす中,冬を知らせる冷たい風が私たちに吹き付ける。



咲 「ホントに寒いよね。マフラーしてきて良かった。」


怜香「男子はいいよね〜。スカートじゃないから。」


咲 「うん(笑)」



しばらくレイと会話しながら歩いていると



突然,私のマフラーがとれたんだ。



咲 「あっ…。」



消えたマフラーを動揺しながら探す私。


そして,そんな中でゆっくりと私たちの前を歩く白いヘッドホンをした男子が一人。


とれた私のマフラーを手にして…



咲 「そっ,それ私の!!」


SEVEN「このマフラーいいね♪暖かそうで(笑)」


咲 「ほ,細貝くん!?」



ヘッドホンを首にかけて


無邪気な笑顔で私にそう言ったんだ。



[ドキッ…]



見つめられた視線に,急に恥ずかしくなって顔が少し赤くなる私。


ちょっと待って…


私,マフラーを取られたのに


なに赤くなってるの?



怜香「………。」



素に戻った私は手を出して細貝くんに言ったんだ。



咲 「細貝くん,返して。」


SEVEN「ごめん(笑)暖かそうだったから,ついつい…。咲ちゃん,おはよ。」


咲 「おはよ。」



突然現れた細貝くんに動揺しながら,私はマフラーを受け取って首に巻いていく。



制服に鞄…


細貝くん,今日は学校に行くのかな。



SEVEN「怜香じゃん♪久しぶり(笑)元気してた?」


怜香「うん…久しぶりだね。おはよ。」



レイがぎこちなさそうに答えてる。



咲 「細貝くんってレイと知り合いだったの?」


SEVEN「あぁ,幼なじみって奴かな。親同士が友達でさ,小さい頃からよく遊んでたよね(笑)」



レイと幼なじみ。


そっかぁ…



咲 「ふぅ〜ん。」


怜香「SEVENが学校に来るなんて珍しいね。私がたくさんメールしても無視して休むのに…。それに咲とも仲が良さそうだけど…。」


SEVEN「怜香には感謝してるよ♪今までは学校なんて行く気さえなかったけど,ちょっと俺の中で興味が沸いてきたんだよね(笑)なんでかな。」


怜香「………。」


SEVEN「とにかく,また今日からよろしくな。さぁ,つまんない授業を受けに行くとしますか♪」



白いヘッドホンをまた耳に当てて,先に歩いていく細貝くん。



「おっ!!SEVENじゃん!!久しぶりぃ〜。」


SEVEN「おはよ♪男子生徒A。」


「名前忘れたのかよ!!!」



細貝くんの周りに自然と集まる人たち。



「嘘!?SEVEN,なんでいるの?マジで嬉しいんだけど(笑)」


SEVEN「復帰しました(笑)」


「やった!!ロサにも報告だね。」


「うんうん!!」



細貝くんって人気があるんだね。


自然と入ってくる感じがいいのかな。



怜香「………。」



それを何故か複雑な表情で見つめるレイ。



咲 「レイ?どうかした?」


怜香「ううん,何でもないよ(笑)私たちも行こ。」


咲 「うん…。」



私はレイの表情を気にしながらも学校へと向かった。









学校に着くと,私は深呼吸を一度して教室の中へと入っていき自分の席に座る。


前には彼が座ってる。


視線を合わさない様にして座ったけど,やっぱり気持ちが悪い。


昨日の事が嫌でも思い出されて,少しだけ震える私。


白波はいつもの様にダルそうにしていて,細貝くんには女子たちが集まってる。


石上くんは相変わらず暗い表情のまま一人。


私の視線はいつの間にか席について何かを書いている村上さんへと向いていた。



そんな中で担任の先生が教室へと入ってくる。



先生「おはよう。おっ!?細貝?お前来てたのか?まさに奇跡だな(笑)」


SEVEN「奇跡的に♪」


先生「まず,そのヘッドホンを外せ。」


SEVEN「はい(笑)」



皆が笑い合う中で,授業が始まっていった。


私は休み時間が来る度に村上さんと話すタイミングを探していく。でも休み時間はいつも教室にいない村上さん。なかなかタイミングが掴めずに時間だけが過ぎていく。





そして…



昼休み。



私は勇気を振り絞ってお弁当を食べ終えた村上さんに声をかけた。



咲 「村上さん,ちょっと大事な話があるんだけど…いいかな?」


村上「篠山さん?大事な話って…何?」


咲 「ここだと話しにくいから…。」



私は村上さんを連れて屋上へと向かったんだ。


屋上には生徒の数も少なくて,話す空間としては最適だった。そんな中で私は自己評価のシステムについて聞いていく。



村上「話って?」


咲 「村上さんに突然こんな事を言うのはおかしいかもしれないけど,でも…私は間違ってるって思うから言うね。」



村上さんは冷静な表情のまま私を見つめている。それだけで言いにくくなる私。



咲 「私,この前言われた自己評価って間違ってると思う。人が人を評価するなんて高校生がする事じゃないよ。もし,もしもだけど…村上さんがこのシステムを作ったなら止めるべきだと思う。」



そう言った瞬間…


村上さんが小さく笑ったんだ。



村上「篠山さんはまだこのクラスに来て日が浅いからわからないんだよ(笑)それに白波くんに何か吹き込まれたんだね。」



白波…?



村上「とりあえず言っとくけど,このシステムは私が作ったんじゃない。」



村上さんじゃない?


じゃあ誰が…



村上「白波くんに何を言われたのか知らないけど…きっと白波くんは,このシステムを壊したいんだと思うよ。彼が2ーAのクラスでイジメをしていた張本人だから。」



えっ…


白波がイジメを!?


嘘だよ。


そんなの…



村上「白波くんはこのシステムのおかげで自由に人を傷つける事が出来なくなった。だから,この自己評価のシステムは間違ってない。これによって2ーAはイジメがない優秀なクラスでいられる。白波くんがイジメをしていた事が本当か嘘かは担任の先生に聞いてみたらわかるよ(笑)」



その事実に何が本当なのかまたわからなくなる私。


白波がイジメをしていたなんて知らない。


あの白波が?


たしかに口は悪いけど,そんな事をする様には見えなかった。


私を助けてくれたし…



咲 「白波はイジメをする様な人じゃないよ。きっといい人だと私は思うし。」


村上「あまり人を信用しない方がいいよ。誰だって裏の部分があるんだから。」



でも…


だからって石上くんの様に変わってしまった人がいるのに正しいなんて言えないよ。



咲 「白波がそんな事をしてたかどうかなんて私は知らないけど,やっぱりこのシステムは…」



そう私が言った瞬間だった。



村上「篠山さん,あまり深入りしない方がいいよ。きっとこれは見えないからこそ成立する事だから。私まで悪者にはなりたくない。変な事してたら評価されるよ。そういう事だから…じゃあね。」



謎の言葉を残して屋上から去る村上さん。



咲 「見えないから成立するって…。」



どういう事なの!?



わかんないよ。





システムを作った人物が誰かわからないまま…



白波の知られざる過去を知り



私は屋上で一人,青空を見つめて



また謎の闇に包まれていた。



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