◆7・SEVEN (1/1)
セブンという名の男子。
白波が私の手を強く握りながら学校を出ていく。
いつの間にか握られた手…
それでも私は嫌な気持ちじゃなかった。
私を連れていく彼の背中からは優しい温もりさえ感じる。
さっきまでの恐怖心もなくなってる。
やっぱり白波はいい人なんだよね。
圭介「ったく…何で俺が馬鹿女の世話をしなきゃいけねぇーんだよ。」
咲 「ごめん…。でも,ありがとう。」
圭介「うるせぇーよ。礼ならアイツに言えって。」
校門までたどり着くと,一人の男子が立っていたんだ。
私は白波の手を自然に放し,その男子の前に近づいた。
SEVEN「ご苦労様。やっぱ当たりだろ?俺の勘は鋭いから(笑)」
優しい笑顔。
その端正な顔立ちを見て,ドキっとする私。
両耳には今時じゃない白くて大きなヘッドホンをつけて,無造作にキメられた黒髪が清潔感を感じさせる。
背も白波と同じぐらい高い感じかな。
この人は…
SEVEN「また怖い顔してる(笑)」
圭介「黙れ。2度殺すぞ。」
SEVEN「怖い怖い(笑)圭介と話すと命がいくつあっても足りないな。」
圭介「お前,俺を使うのもいい加減にしろよ。」
SEVEN「いいじゃん(笑)俺達は幼稚園からの付き合いだろ?なっ!圭くん♪」
幼稚園からの付き合い?
という事は白波の友達なの?
圭介「やめろ。マジで海底に沈めてやる。」
SEVEN「え?」
圭介「聞こえてんだろ!?そのヘッドホンをバラバラにするぞ。」
仲良しに見えるけど…
咲 「あの…。」
私が二人の間に割り込む様に声をかけると,ヘッドフォンを外して…
SEVEN「よっ!!咲ちゃん。俺と話すのは初めてだよね。俺は細貝勇だよ。自称,空気の様な存在の男。皆からSEVENって呼ばれてる。よろしくね。」
圭介「ただの登校拒否男だろ。」
細貝勇
この名前
そういえば…
…………………………………………………
朝,いつもの様に担任の先生が出席をとっている。
返事をしていくクラスメート。
そんな中…ある名前で止まる。
先生「細貝。おい細貝はいないのか?」
「またズル休みじゃないんですか?」
「SEVENならありえる(笑)」
「あぁ〜早くSEVEN来ないかなぁ〜。早く会いたいのに。」
「あんた下心見え見え。」
「えぇー,だって〜(笑)」
「アイツどんだけモテんだよ!!」
「だって向井理に似てんだもん(笑)」
先生「また欠席か…アイツは留年決定だな。」
白波の斜め後ろの席の人…
また休みなんだ。
…………………………………………………
あっ!
あのいつも欠席だった細貝って人。
この人が…
SEVEN「今ハマってる音楽は,リアーナ・ユニーク・スティービーホワン・マットキャブ・クリスブラウンなどなど…。」
白波「聞いてねぇーよ。」
SEVEN「とにかくよろしくね(笑)」
彼から差し出された手に,私はゆっくりと応じて握手を交わす。
手が冷たい…
咲 「うん,よろしく。細貝く…あっ,SEVENだったよね。」
SEVEN「どっちでもいいよ♪勝手につけられたあだ名だから。」
なんでSEVENなんて言うのかな。
7に関係があるとか…
私はそんな事を思いながら,歩き出した白波たちと一緒に帰っていく。
帰り道の途中で,何で私を助けてくれたのか気になって口から言葉がこぼれた。
咲 「なんで私をた…」
SEVEN「今は質問ナシ。とにかく,咲ちゃんは変な行動をしない事。圭介からも言われただろ?」
咲 「う,うん…。」
何で教えてくれないのかな…
清水くんとの事があって,それ以上…今は何も考えれない私。
明日,学校に行くのも嫌な気がする。
それでも…
あの時に言った白波の言葉を思い出してる。
白波は見ない方がいいなんて言ってたよね。でも,私はこのクラスで起きてる事を見ないフリなんて出来そうにないよ。
なんかクラスメートの自由さえ,なくなってる。
よくわからないシステムで縛りつけてるみたいに…
きっと間違ってるよ。
こんなの…
白波やその謎の友達…細貝くんに会った事で,私の中で謎がまた深まっていく。
それでも…
やっぱり私は知りたいよ。
このクラスに眠る闇を…
―――――――――――――――――――
良かったぁ…
危うく忘れるトコだったよ。
また学校に戻らなきゃいけないなんて最悪。
「はぁ…。」
私は忘れ物を取りに教室に戻り,階段を駆け降りて急いで校舎を出ると…
校門の所で咲が立っているのが見えたんだ。
怜香「あれ?咲,用事があるって言ってたのに。どうしたのかな…。」
そして…
私は咲のそばにいる人を見て
目を疑った。
圭介くんと一緒にいるのって…
怜香「う,嘘…。SEVENだよね…。」
仲良く帰る姿を見て,胸が締め付けられる思いがした。
苦しくて…
辛くて…
何で咲とSEVENが一緒にいるのかなんて,私にはわからない。
なんで咲が…
仲良くなってるの!?
マジでありえないよ…
私が今まで頑張ってきた結果なのに!!!
咲を守ってあげようと思ってたのに!!!
酷いよ!!!
何も知らないクセに!!!
夕日が落ちていく中を,私は歯をくいしばり…
泣きながら走って家に帰っていったんだ。
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