6×6BLOCK


◆利用する者 (1/1)

予想した通りに机の裏側に番号を見つける咲。そして,それを見ていた清水という一人の男子。





清水「あのさ,僕は篠山を自由に評価できるって知ってる?その評価で2ーAのクラスメートの篠山を見る目が変わるんだ。誰が考えたか知らないけどさ,このクラスにある自己評価のシステムって馬鹿だよな(笑)だって皆が皆,正しく書くなんてわかりもしないのに。どうせ引きこもりのいかれた奴が作ったんだよ。って…まだ篠山は知らないか(笑)でも,コソコソ変な事をするのは僕としても見逃せないんだよね。」



なに…


この気持ち悪い空気。


話しもした事がないのに,ベラベラと私に話しかける彼があまりにも不自然で動揺していく。


そして,ニヤついてる彼を見てるだけで何故か吐き気さえするんだ。


前にもこんな事があった様な…



身の危険を感じた私は,体が震えたまま自分の席へと急いで鞄を取りに行く。



咲 「私には自己評価なんて関係ない。それに今,帰ろうとしてたとこだから。」



別にやましい事なんてしてない。


ただ机を見ただけだし。


評価なんてどうでもいい!!!


きっとその自己評価のせいで石上くんもあんな事になったんだ。


絶対そうだよ!!!


私はこの空間から早く逃れたくて,ごまかしながら鞄を手にした。



清水「ふぅ〜ん(笑)石上の机を探ってる様に見えたけどなぁ…,まぁいいや。そんな事よりさ〜篠山って意外と可愛いよね。」



えっ…


何言ってるの?



咲 「そんな事ないよ。私,もう帰るから。」



清水くんが言った言葉に恐怖を感じ,鞄を手にした私は教室を出ようとした。


でも…



清水「まだ君は何も知らないからなぁ〜。そうだ!僕が教えてあげようか(笑)」



清水くんは笑いながら顔を斜めに傾けて私の前に立ち塞がったんだ。



ドクッ!!ドクッ!!ドクッ!!



凄く怖くなって,心臓の音が恐怖心と比例していく。



咲 「私は帰るの。通して。」


清水「君が何を探ろうとしてるか知らないけど…地獄を味わいたくなかったら僕の言う事を聞いた方がいいよ。」



地獄?


どういう事!?



清水「わかるよね?」



そう言った清水くんが私にゆっくりと近づいてくる。


私は体の震えが止まらなくなり,鞄を強く握りしめて後ずさっていく。


今にも近づきそうな彼から離れるようにして。



咲 「清水くん,なんか変だよ。」


清水「変じゃないよ。僕はね,実は篠山が転入してきてから,ずっと見てたんだ(笑)自己評価とは別の興味でね。まだ日にちはあまり経ってないけど,授業中に篠山が後ろにいるだけでヤバくてさ…困ってたんだよね(笑)」



嘘…


清水くんってこんな人だったの!?


大人しそうな外見からは想像できない程の言動や表情…。


こんな人が私の席の前にいたなんて。


わからなかった。



私は窓側まで追い詰められて,清水くんがゆっくりと近づいてくる。



清水「篠山…マジで可愛いよ。」



人には隠しているものが必ずある。それは綺麗な恋心,強い友情,汚い憎しみ,苦しい痛み,そして歪曲した征服欲。なにかのタイミングでそれらは現れ,運命を別の方向へと変えていく。


そんな事は今まで人の汚い部分を見てきた私には十分わかってたはずなのに…


でも,あまりにも突然過ぎて


感情をコントロールする事さえ困難で,対処の仕方さえわからない。



篠山「先生を呼ぶよ!!!近づいたら大声で叫ぶから!!!」


清水「いいよ(笑)」



嘘!!!


なんで!!!



清水くんが私の髪を触ろうとした瞬間…










圭介「清水,お前何やってんだよ。」










白波!?



教室のドアからダルそうに白波が入ってきたんだ。



清水「白波くん…?」


咲 「白波!!!」



私はこの恐怖から逃れたくて,一瞬の隙をついて必死に白波のそばまで走っていった。



咲 「よかった…。」


圭介「さっさと帰れよ馬鹿が…。」



白波の顔を見ただけで安心する私。



清水「なんで白波くんがいるのかな。最近,一匹狼じゃなくなったみたいだね(笑)」


圭介「お前…ルールを守れない奴はどうなるか知ってるよな?」



白波が鋭い視線で清水くんを睨みつけてる。



清水「白波くん,僕が嫌いなのはわかるけどさ…僕も君みたいな奴が大嫌いなんだよね(笑)」


圭介「テメェ…マジで殺すぞ。」



白波と清水くんの間に張り詰めた空気が流れていく。



清水「いいよ(笑)殴っても。わかってるはずだよね。このクラスではイジメや暴力が厳禁だって事。ルールを守らないのは誰かな?守らないと困るのは誰かな?僕らは天の目から見られている。処罰を受けても知らないよ。」



白波の顔が歯痒そうに苛立ちを我慢しているみたいだった。



圭介「チッ……。」



二人の言葉に,このクラスの闇が見え隠れする。



清水「ククク…冗談だよ(笑)ちょっと篠山さんと話してただけだから。じゃあ僕は帰るね。さよなら,篠山さん(笑)」



彼が不気味な笑みを浮かべたまま教室を出ていった。


それを見て,私は力無く座り込む。


震えがおさまらないまま…



咲 「なんなの…これ…。」


圭介「言ったはずだろ。もう変な行動をするのはやめろ。お前はただルールに従っていればいいんだ。自分のためにも…。」



白波が私に投げかける言葉…


意味なんてまだわからない。


でも,これだけはわかる。



咲 「なんかこのクラス,変だよ!!!」


圭介「あぁ,そうだよ。でも見ないフリをするのが1番なんだ。知る事よりも…。帰るぞ,馬鹿女。」


咲 「………。」



それでも



少しずつ見えてきた闇に



私は逃げる選択をしなかった。



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