6×6BLOCK


◆OVER LOOK (1/1)

深く入り過ぎる危険。





私が目の前に立っていても反応しない石上くん。


それでも気になっていた私は声をかけた。



咲 「石上くん,今日はなんか元気ないね。」


孝 「そうかな…。変わんないよ。」



力無い返事が返ってくる。


私はその事でまた様子がおかしく思えてしまうんだ。


私が深く入り込む事じゃないかもしれない。


ただ体調が悪いとか,学校以外の事で何かあったのかもしれないし。


でも…



咲 「急にごめんね。でも,石上くん…あんまり元気がなかったから気になっちゃって。何かあったの?」


孝 「………。」



私の言葉が届かない様に…


石上くんが教科書やノートを黙ったまま直し始める。


その姿に苦しみをなぜか感じるんだ。



咲 「何もないならいいんだけど…。」


石上「変な奴だな…何もないよ(笑)」



明らか過ぎるほどの作り笑い。


何かあったとしか思えない私。


そんな中…


開いたノートを直す時にあるページがめくれて私の目に映ったんだ。








俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ俺がいけないんだ………








咲 「そ,それって…。」



私はその苦しそうな文字たちを見て,体が震えていたんだ。



孝 「ただの落書きだよ(笑)」



そう言いながら急いでノートを閉じて直す石上くん。



違う…


これはただの落書きなんかじゃない。


私にはわかる。


私もノートに書いた事があるから…





[ブー…ブー…ブー…ブー…]





突然,どこからか携帯のバイブ音が鳴っているのが聞こえる。


そして…



康太「篠山!!何やってんだよ(笑)」



そう言いながら不自然なタイミングで現れる西島くん。


さっきまで石上くんと挨拶もしなかったのに…



咲 「石上くんが元気ないから…。」


康太「孝は体調がちょっと悪いだけだよ。心配すんなって(笑)大丈夫だから。部活を頑張りすぎたんだな。馬鹿な奴だよ(笑)」


孝 「へへ…そうかも(笑)」



あの放課後の様な感じの二人じゃないことはわかっていた。


何かを隠してる?



咲 「そっか…じゃあ,私の考え過ぎだね。」


康太「そうそう(笑)考えすぎだって。でも篠山,ありがとな。孝を心配してくれて。」



西島くんの目が…


涙目になって言っていたんだ。


やっぱりおかしいよ。


西島くんは私に何かを伝えようとしてるの?


どこか周りを気にしてるみたいで…


何かを守ろうとしてる?




私はそれから席に戻り,全てが疑問に思える中で次の授業を受けていく。


石上くんの変化とあのノートの文字,西島くんの悲しそうな目,そして…冷たい感じがするクラス。


もしかして…


あのホームルームが原因なのかも。


授業を受けながら,私は自分の中で生まれた謎を知りたいと強く思っていた。


そして,新しいノートを取り出した私はそこに書いていくんだ。


今まで疑問に思った全ての事を…





【謎の転校生…結菜。《鬱病》】



【私の机の数字。《12・×》】



【白波が言った言葉。《見られている》】



【謎のメール。《15・P:A→N》】



【クラスにあるもの。《自己評価》】



【裁判の様なホームルーム。】



【石上くんの変化とノートの文字。】





この私の疑問に思った事が意味するものは…


他の授業が始まっても,勉強なんてせずにずっと考えていく私。


ただの考え過ぎかもしれない。


でも私は知りたい。


このクラスで起きてる事を…



何気なくシャーペンで数字に丸をつけていく。



12…



15…



これって,まさか席の番号?



そして,私はこのクラスの席をブロックの様に並べて書いていく。


そのノートに書かれたブロックを眺めながら私は何かを感じとる。



咲 「これに意味が…。」


怜香「咲,なんか言った?」



急にレイが話し掛けてきて,動揺しながらノートを閉じる私。



咲 「何でもない(笑)ただの独り言だよ。」



あれ…



咲 「皆がいない。」



周りを見ると誰もいない事に気付いた私。



窓を見ると日が暮れて,空がオレンジ色に染まっている。



怜香「もう放課後だよ(笑)早く帰ろ。」



そっか…


夢中になりすぎて,ずっと私は考えてたんだ。


いつの間にか授業も終わってたんだね。



怜香「咲,帰らないの?」


咲 「う,うん…。」



私にはどうしても一つだけ確かめたい事がある。


それは…



咲 「ごめん…レイ,今日は先に帰ってて。ちょっと用事があるから。」


怜香「そっかぁ…わかった。じゃあまた夜にでもメールするね(笑)」



レイ,ごめんね。


私は知りたいから。



咲 「うん。ホントにごめん。」


怜香「全然いいよ(笑)じゃあまた明日ね。」


咲 「また明日。」



レイが教室から出ていくのを見送った私は,誰もいないのを確認する。


そして…


吹奏楽の音が欝すらと聞こえる中で


石上くんの席にゆっくりと近づいた。



咲 「私の席に番号があるなら,もしかしたら…」





ドクッ…




ドクッ…




ドクッ…




ドクッ…





鼓動が強く鳴り響く中



私はソッと石上くんの机の裏を覗き込んだ。










【15・×】










嘘…



やっぱり番号が。



怖くなって石上くんの席から後退りする私。










清水「篠山,コソコソなにやってんだよ。いけないなぁ…クラスを壊す様な真似をするなんて(笑)」










咲 「!!!」



突然の声に驚いた私は,恐る恐る声のする方へと振り返る。



そこには私の前の席にいつも座っている清水くんがいたんだ。


あまり話した事さえないのに…





清水「しっかり評価しないとね(笑)」





評価!?



まさか…



私は気付いていなかった。



私が滝沢さんを評価する様に,私自身も誰かに評価されているという事を。



それが前の席の清水くんだったなんて…





何かとてつもない闇に,私はもう抜け出せないほど入り込んでいたんだ。



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