◆HR裁判 (1/1)
完全なものもいずれ不完全になる。
お風呂に入りながら,今日起きた事をずっと考える私。
口まで湯舟につけながら…
私がいた席には結菜っていう怜香の友達が前にいたんだよね。
鬱病って本当なのかな。
なんか彼女がまだ私の席にいるみたいに話してたけど…
それに水川さんや白波が同じ様に人差し指を上に向けてたのって,何か関係があるの?
見られてるって言ってたけど,全然意味がわからないし。
あの机の裏側に書かれてた[12・×]の謎の数字。
他の机にも数字があるのかな?
全然わかんない…。
[ブクブクブク…。]
とにかく
絶対なんかあるよ…
あのクラスには。
母親「咲!!いつまでお風呂に入ってるの!!!早く上がりなさい。」
咲 「わかってる!!!もう…」
私はお風呂から上がり,パジャマに着替えて自分の部屋へと戻っていった。
そして…
部屋の中に入ると,携帯のライトが点滅していたんだ。
咲 「メールかな…。」
ベッドに座りながら携帯を手にとり,画面を見ると…
[新着メール一件。]
咲 「やっぱり。」
私は湯冷めしない様に布団の中に入りながらメール開いた。
ピッ…
[from.2ーA連絡会]
[明日のHRの時間で学級委員の村上さんを中心に,この間おこなわれた体育祭の反省会をします。各自,自分の反省を一つ以上発言する事が絶対条件です。より良いクラスになるためによろしくお願いします。]
体育祭の反省会って。
そんな事するんだぁ…
まぁ,転入してきた私には関係ないよね。
もう終わってたんだし。
メールを削除した私は,携帯をいじりながらゆっくりと自分の時間を過ごしていく。
そして,いつの間にか眠りについた。
きっと今日起きた事が少なからずとも私の心や体に疲れを溜めていたから。
深い眠りについた私は,携帯を握り締めて目から涙がこぼれていたんだ。
咲 「利香…。」
まだ後悔してる…
…………………………………………………
先生「北朝鮮の様な独裁政権を持つ特殊な国は全てトップ一人の権限によって国が左右される。そして,国家を円滑に進めていく上で必要になってくるのが国民の力だ。国民を支配するために彼が利用したのは人の【恐怖心】と言えるだろうな。人間の恐怖心を利用し,メディアまで操作する事によってあの様な国が成り立つ…。そして核の抑止力を持って外敵を牽制してね。まぁ…民主主義とは違い古風なやり方だが,強制的に国をまとめるという意味では確実なやり方かもしれない。ちょっと余談だったな。じゃあ次にいくぞ〜。」
授業を受ける私のノートは白紙のまま
私は孤独を痛感しながら耐えていた。
北朝鮮?
そんな事…
どうでもいい。
この教室で起きてる事はどう説明するの?
利香は登校拒否になり
私はクラスメートからシカトされる毎日。
これは人間として正しい事なの?
恐怖心なんていらない。
私には立ち向かう強ささえあれば…
…………………………………………………
新しい高校に通い始めて8日目。
私はいつも通りに自宅から学校まで20分の距離を歩きながら登校していった。
今日は朝から雨が降っていて,空気にも湿り気を感じる。
[ザァァァ………]
雨粒が傘に当たる音が聞こえてきて
傘をさしていると何故か悲しくなる私。
あの時の事をまた思い出すからだよね。
歩く速さがゆっくりになる中
学校の校門まで来ると…
後ろから声が聞こえてきた。
圭介「何トロトロ歩いてんだよ。クソ転入生,遅刻すんぞ。」
咲 「し,白波…!?おはよ。」
白波「お先〜。」
白波が私を抜いて先に校舎へと歩いていった。
怜香「咲!!おはよ(笑)雨はヤダね〜。」
咲 「あっ,おはよ。」
怜香「ねぇ,さっきの圭介くんだよね?何かあったの?」
咲 「いや,ただ声をかけられただけだよ。特に何もないけど。」
それを聞いたレイが驚いた表情をして私に言ったんだ。
怜香「圭介くんが声をかけるなんて…ちょっと驚きかも。いつも怒ってるか無口なのに。」
きっと仲良くならないとわからない事がある。人はついつい第一印象だけで判断しちゃって,その人を決めつけてしまうから。
白波もきっと本当はいい人なんだよ。
皆はそれをただ知らないだけ。
私はレイと一緒に学校の校舎へと入り,一日の授業が始まっていく。
そして,時間が何事もなく過ぎていき,ホームルームの時間になっていた。
先生「村上,あとは頼んだぞ。先生は職員室に戻っているから,終わったら呼びに来てくれ。」
村上「はい。」
[ガラガラガラ…バタンッ。]
担任の先生が教室から出ると,どこか異様な空気が全体に漂っていく。
村上「じゃあ,今日のホームルームを始めます。昨日,皆さんにメールが届いたと思うので…さっそく今回の議題である体育祭での反省点を話し合いたいと思います。」
なんか生徒主体でおこなってるなんて,ちょっとビックリかも…
前の学校では先生がいつもいて,生徒だけでなんてなかったから少しだけ戸惑う私。
村上「じゃあ,一人ずつ反省点を言って下さい。」
学級委員の村上さんが指名していき,指名された人は淡々と反省点を答えていく。さすが前日からメールしてただけあって黙る事なく答えていくクラスメートたち。
なんか凄い…
そして,廊下側から3列目の5番目の席に座る石上孝くんに順番が回って来た時だった。
村上「石上くん,お願いします。」
石上くんは相変わらずニコニコしたまま席から立ち上がって言ったんだ。
孝 「特にないね。まぁ,皆で楽しく頑張れた事が1番かなぁ〜なんつって(笑)」
「………。」
静まり返る教室。
時計の秒針の音が大きく聞こえてくる。
別に変な事なんて言ってないのに,何でこんな空気になるの?
村上「真面目に反省点を言って下さい。皆さんは石上くんの反省すべき点は何かありますか?あれば挙手して下さい。」
冷たい表情で村上さんが皆にそう言った途端…
クラスメートたちが次々に手を挙げたんだ。
何これ…
酷いよ。
孝 「ちょ,ちょっと待ってくれよ。別に反省点なんてなかったらそれでいいんだろ?それに俺の反省点なんて何もないし。」
明らかに石上くんは動揺してる。
でも…
村上「石上くんの自己評価にもあったみたいに,体育祭でもリレーでふざけながら走ってました。」
自己評価!?
なにそれ…
孝 「そ,それは…もう楽勝だったから皆を楽しませようと思ってやっただけだろ。ちょっと油断しただけだって。」
ロサ「そうそう(笑)私も見たよ。孝はやってたよね〜。ピースなんかしちゃってさ。それで2番目に走ってたC組の奴に抜かれてやんの…マジで最低。」
水川さん…
「俺も見た!見た!!」
「私も!!あれはないよねぇ〜。」
「選手に選ばれた人は,みんな一生懸命走ってたのに…」
「笑えない。」
「負けたのお前のせいじゃん。」
康太「………。」
皆が口々にそう言う中…
仲のいい西島くんも黙ったままで俯いてる。
孝 「何だよ。俺に何が言いたいんだよ!!!ちょっとミスっただけだろ!!!」
ロサ「あんたがちゃんと反省を言わないから皆が言ってあげてんじゃん(笑)まさかリレーで2位になったのを私たちが悪いとか言う訳?」
孝 「それは…。」
村上「本当に石上くんは反省点がないんですか?」
皆,なんでたったそれだけの事で石上くんを責めるの?
絶対おかしいよ。
咲 「ねぇ,レイ…。」
怜香「今は喋ったらダメだよ。静かにしてないと…」
レイは何も感じないの?
絶対変だよ!!!
こんなの!!!
私がそう思ってる間にも,クラスメートの冷たい視線が石上くんに集中していく。
その光景が私の目には裁判の様に見えたんだ。
村上「私は知らないから…。」
村上さんの一言で凍りつく様にまた静まり返る。
ロサ「私も知ぃ〜らない(笑)」
孝 「マジでふざけんなよ!!!こんな事があるかよ!!!俺はちゃんとやってきただろ!!!」
何かに怯えた様に叫び出す石上くん。
それを見た私は石上くんを助けようとして…
咲 「あの!!!」
思わず立ち上がってそう言った瞬間だった。
圭介「村上,次…俺だろ?早くしろよ。」
白波が私を止める様に手を挙げて言ったんだ。
そして…
この静かな空間の中で…
スカートのポケットに入れてあった私の携帯が震えていた。
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