◆謎の数字と一人の少女 (1/1)
咲の身に必然的に起こる運命の始まり。
それから私は何事もなく毎日授業を受け,新しい学校にも慣れていく。
少しずつ他のクラスメートとも挨拶を緊張せずに交わせるようになり,レイとの関係もどんどん仲良くなって毎日が充実していった。
あの学級委員の村上さんが言っていたサイトも怪しいものではなく,その日の行事や必要なものをメールで本当に教えてくれて…とても便利に感じるほど。
それに,サイトを覗いてみると『クラスの心を一つに!!』『イジメを皆で無くそう!!』なんてテーマを掲げるほど真面目なサイトだったんだ。
初日は何か怪しいなんて思っていたけど,本当はいいクラスなのかも…
そう思い始めて1週間が経った頃。
あるキッカケで全てがズレていく…
私はいつも通り真面目に授業を受けている時だった。
先生「えぇ〜ここの問題は前のページにもある様に…」
シャーペンをクルクルと回していると勢いよく机の下に落としてしまう。
咲 「あっ…。」
皆が集中して授業を受けていた事もあり,注目を浴びる私。
ヤバっ…
そう思いながら私は机の下を覗き込む。
落としたシャーペンが自分の机の下にあるのが見えて,私は机の下に取りに行った時だった…
机の裏側に何かを見つける。
【12・×】
何だろコレ…
数字みたいだけど。
机の裏側には油性の黒マジックで数字と×が書かれてあった。
きっと先生が書いたものかな…
何も気にせずにまた席に座る私。
すると…
何故か背中から視線を感じるんだ。
ゾクッとする様な感覚…
私は視線を感じる方へとゆっくり目を向けた。
…………………………………………………
利香「本当は気付かないだけだよ!!!皆それでいいと思ってるの!!!この苦しみから逃れられるなら何でもする!!!自分の命を捨てたって!!!」
雨が降る中,傘に雨音が悲しく当たりながら目の前の利香は泣きながらそう言ったんだ。
あれから利香は私を避ける様になり,学校にも姿を見せなくなった。
私のせいだって事はわかってる…
でも,取り戻したい
大切な友達を。
咲 「じゃあ見てるだけでいいって言うの!?そんなの訳わかんないよ!!!」
私は泣きながら言ったんだ。
利香「大きな声を出さないで!!!私は咲といたら苦しいの!!!一人じゃ何もできやしない!!!咲一人が何をしたって変わらない!!!それが現実なんだよ!!!」
私といたら苦しい…
私が何をしたって変わらない…
それでも私は
咲 「じゃあ,どうしろって言うの!!!間違ってる事を間違ってるって言えないなんて…おかしいよ!!!」
そう言うと…
利香は傘を投げ捨てて
雨に濡れながら言ったんだ。
利香「見つけなきゃ良かったんだよ…。」
見つけなきゃ良かったって…
その言葉の深さに戸惑う私。
利香「人の苦しみなんて…。」
利香は両手を顔にあてて泣きつづけた。
降り落ちる雨の様に…
…………………………………………………
なに…?
目線が合って動揺する私。
視線の先には,窓側から3列目の1番後ろの席に座っている男子が私の事をジッと見ている。
そして,口を開けて声を出さずに何か言葉を私に送ってる。
私は気持ち悪い気持ちを抑えながら,その口の動きを必死に読み取ろうとする。
【も・う・抜・け・出・せ・な・い・よ】
もう抜け出せない!?
私は急に怖くなり,すぐに教科書へ目を向けた。
何!?
今の!!!
マジで気持ち悪いよ…
そんな気持ちのまま授業が終わり,私は休み時間になってすぐにレイを廊下に連れ出して話をしたんだ。さっきの事が頭から離れなかったから。
咲 「レイ,ちょっと聞きたい事があるんだけど…。」
怜香「咲,どうしたの?そんな怖い顔して…。」
咲 「1番後ろの席のメガネをかけた男子って…。」
それを聞いたレイが,笑いながら私に言ったんだ。
怜香「あぁ〜,カルトの事ね(笑)2ーAの中でも変わった男子だよ。オカルトが大好きで,皆からカルトって呼ばれてるの。変でしょ(笑)でも,凄くいい人なんだよ。もしかして授業中に怖い感じで口パクされたとか?」
咲 「うん…。」
怜香「私も何十回もされたよ(笑)脅かすのが好きみたいでさ〜。もう誰も驚かないのに(笑)きっと咲が転入生だから脅かしたんだね。」
そっか…
咲 「なんだぁ〜もうマジでビックリしたよ…。」
怜香「完全にやられたね(笑)」
私の不安だった気持ちが一気に和らいでいく。
まだ知らない事が多過ぎて困惑してしまう。
こんな事が続いてたら心臓がもたないよ。
咲 「机の裏側に…。」
つい口がすべって言ってしまう私。
怜香「裏側?」
咲 「いや…何でもない(笑)気にしないで。なんかまだ慣れてないだけだから。あっ,今日も学校が終わたら一緒に帰ろ。」
怜香「ごめん!今日はちょっと用事があって…一緒に帰れないんだぁ〜。本当にごめんね。」
用事かぁ…
じゃあ,しょうがないよね。
咲 「うん。いいよ(笑)」
私はレイに笑顔でそう言って教室へと戻っていった。
時間はあっという間に過ぎ…
下校時間になり,次々とクラスメートが帰る中で私は教科書を鞄に入れる。
レイはもう先に帰っていない。
そんな中,男子の声が私の耳に聞こえてきた…
孝 「さぁ〜帰ろうぜぇ(笑)こうた。」
康太「帰ろうぜって孝,お前…今日部活はどうすんだよ。バスケ部のレギュラーだろ?」
孝 「ナシナシぃ〜!!自由に生きる俺には必要ないのさ(笑)何事にも縛られない男,それが石上孝!!!」
康太「でた…またそれかよ。部長に怒られても知らねぇーぞ。」
石上孝くん。
まだ何日かしか学校には来てない私でもその名前を覚えるぐらい,クラスのムードメーカー的な存在の男子。
いつも皆を笑わせてる。
孝 「おっ!篠山さんも帰るの?じゃあ,咲ちゃんまた明日ね(笑)明日はたくさん話そうね。」
咲 「う,うん。」
急に話しかけられて驚く私。
康太「お前は馬鹿か!!ほら,帰るぞ。ごめんな,篠山。」
西島康太くんは言わば落ち着かせ役の優しい感じの人。
孝 「バイバ〜イ。やっと解放されるぜ〜!!!」
康太「はいはい…。」
孝 「ハイは3回!!!」
康太「1回だろ…。」
孝 「ツッコむぅ〜(笑)」
孝くんたちが教室を出た後,少しだけ笑顔になる私。
変な2人(笑)
そして…私も夕日が窓から射す誰もいない教室から出ようとした時だった。
「返してよ…。」
一人の知らない女の子が教室のドアに立っていたんだ。
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