不器用恋愛
[EPISODE 3](13/13)
無言で睨みつけて、ドアを開けようと伸ばしていた腕を戻す。
脅しだ。
完璧脅してきた。この人。
「すぐ脅す…」
ぼそっと。
聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で言ったんだけども。
「脅しじゃないよ、願望」
ばっちりこの悪魔さんには聞こえてたみたい。
てかまずなに、願望って。
「もうなんでもいいですから、普通に降ろしてください…」
「だから家の前で降ろすってば」
どうにもこうにも、この人折れない。
絶対これ教えるまで車から降ろさないつもりだよ。
「…強情」
本当に強情。本気で強情。
何だこの人は。
大人じゃないのか。
嫌味ったらしく私は言ったつもりなのに。
その言葉を聞いて、「正解」 なんていいながら笑うもんだから。
え、本当におかしいのかな。
結局、もうどんなに足掻いても無理だと思った私は渋々家を教えて。
本当に家まで送ってくれて、なんか逆に申し訳ない。
「…ありがとうございました」
渋々だけど。
送ってもらったんだから、ちゃんとお礼は言わなきゃ。
まあ今日のことも含めてだけど。
「また今度ね、真由ちゃん」
ふわっと笑って、降りる直前に頭を撫でられる。
…今日何度目だ。
私は子供か。
なんて思うけど悪い気はしなかったり。
「…今度なんて私の中にはないです」
「大丈夫、俺が勝手に作るから」
やっぱり強引。強情。
返答が全然可愛くない私だけど。
それに構う間村龍はきっと変な人間違いなし。
今度なんて来るもんか。
逃げてやる。見つからないように。
「逃げんなよ?まあ逃げても捕まえるけど」
そんな私の心を読み取ったのか。
普通にそんなことを言うんだから、流石に驚く。
てか普通に発言怖すぎ。
車から私が降りると、スーッと窓が開いて。
「じゃあね、真由ちゃん、おやすみ」
ニコッと笑われ、手を振られる。
「ありがとうございました。…おやすみなさい」
手は振らなかったけど。
ちゃんと挨拶ぐらいはするよ、私だって。
窓が閉まったのを確認して、家に入る。
玄関のドアが閉まったと同時に車が発車された音がしたから。
中に入るまで見てくれてたのかな、なんて若干自惚れてしまったり。
優しいのか、優しくないのか。
まあ、きっと優しい方だとは思うんだけど。
意地悪7割、優しさ3割。
記念すべき私の初デートは、
思い描いていたもし好きな人が出来た時のものとは十分離れすぎたものだったけど、
まあこれもこれでありかもしれない。
むしろ楽しかった。
また行きたい、なんては思ってないけど。
…多分ね。
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