不器用恋愛
[EPISODE 1](10/10)
「…名前言ったんで離してください」
そう言うと、「あ、ごめんごめん」 なんて言いながらパッと手を離してくれる。
「まゆちゃん、うん、覚えた」
クールそうな顔からは想像つかない、
ふにゃっとした笑顔で頭撫でてくるんだから、気がないにしてもドキってするのは確かで。
これが彼氏欲しい女の子だったら、一瞬で恋に落ちるんだろうなあなんて思ったり。
「夜だし送って行ってあげたいんだけどさ、俺の連れも居るし。ごめんなあ、まゆちゃん」
「別に、1人で帰れます。」
「寄り道すんなよ?気ぃつけて帰れよ、お嬢さん」
私は子供か。
送るなんてしようとしたら本当にゴメンだ。
こんな人に家を教えたくなんてない。
てかまず、初対面だし、ありえない。
「…失礼します」
この場所に居たらずっと話しかけられそうだから。
適当にあしらって、帰ろうとする。
「今度会った時はデートしような」
「じゃあねまゆちゃん」
「おやすみ」
返答なんてしない。
また会う気なんてさらさらない。
どうせ寝たらこの人の名前なんて忘れるんだ。
ああ、もうコンビニ行く気も失せた。
アイスは今日は我慢しよう。
いや、もしかしたら家にひとつあるかも。
そうだそうだ、それを期待しよう。
そんなことを思いながら。
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