KADERA 〜雷竜伝〜
[千年前の神話](1/1)

 「さあ、ここがレジスタンス本部よ。その前に、この時代の状況を知らないと分からないけどね。」

 ルナは、口を開く。カデラに変身するこの少年、もとい天上長門が訳の分からないことばかり口にするので、一から教えることにした。

 「落ち着いて。とりあえず事情を話すから。」
 仕方無く、長門は黙った。

 「いい?今年は西暦3016年で、ここはレジスタンス本部。500年前から、ネオ・パシフィスタが組織されたの。最初はあらゆる種の共存が目標だったけど、いつしか人間、特に地球人至上主義を掲げるようになったのよ。当然、交流のあった宇宙人やロボット、魔物等は反発したわ。でも、全宇宙を守護する戦士達の前にはなすすべもなかった。」

 「そりゃあ、前に被害を受けた奴からすればそうなるのは当たり前だと思うけどね。その戦士って何なのさ?」
 「惑星を守護するもの。守護する星はもちろん、その星に元々いる全てのものを守るもの。あなたの変身したカデラもそのうちの一人よ。」

長門の疑問を丁寧に返すルナである。

「やっぱり、カデラもその一人なの?」

「実は、カデラについて、これといった情報はないのよ。ネオ・パシフィスタのドキュメントファイルにも凄まじい戦闘能力を持った戦士としか書かれていないのよ。」

 ルナは、申し訳なさそうに言った。しかし、長門はそれに対して、

 「まあ、しょうがない。ただ、俺の中に何かいる感じがしたんだ。カデラの変身は覚えて無いから、分かりやすくは言えないけど、何かが戦っていたのは確確信がもてるよ。それに、カデラを見たのは、これが初めてじゃない気がするんだ。」

 長門は、思ったことを言ってスッキリした気分になる。この人なら、遠慮しなくても、大丈夫だと思わせる何かがそこにあったのだから。

 「そう。それで、本題に入るけど、カデラいや天上長門。お願い。私たちレジスタンスを助けて。」

 ルナは、懇願する。もう、カデラしか希望がない。カデラに変身できる天上長門に心から願う。

 「う〜ん。協力もしたいけど、戦いに巻き込まれたくない気持ちもあるからなぁ。・・・・ごめん。一晩考えさせて。」

 ルナは考える。千年も前の平和な時代の人間が31世紀に迷い込み、いきなり死にかけたうえに異形の力を手にした。挙げ句に、いきなり戦えと言われて「はい」と言えるはずがない。長門に限らず、ほとんどの人間は難色を示す。いや、長門は考える時間をくれと言った。それは、戦いは避けられないと直接ではないが感じているかもしれない。

「うん、分かった。いきなり言ってごめんなさい。明日、答えを聞かせて。」

その日は、終わった。長門は、外に出掛ける。真っ赤な夕日が彼を照らしていた。




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