プラシーボ
[臥薪嘗胆](1/46)
『大変な目にあったみたいですね』
魔科学研究部の部室に入った春樹を出迎えたのは、そんな結弦の言葉だった
『大変って…なんのことですか?』
春樹はそう問い返す
昨日の事件は刀哉の言った通り、防災装置の誤作動ということで決着がついた
そのことは報道されているが、巻き込まれた人間については報道されていないはずだ
『隠さなくても大丈夫ですよ、知り合いに軍部の関係者がいますから』
結弦は目の前の機械に目をやったままそう言う
(音羽さんはあの事件を知っている?それなら俺の能力についても?)
『防災装置の誤作動に巻き込まれるなんて、ついていませんでしたね』
しかし、春樹の心配に至る答えは返ってこなかった
さすがに刀哉や麻里(おそらくほとんど麻里が)手を回してくれたのだろう
『いえ、心配して頂くほどのものではありませんよ、このとおり、怪我もしていませんから』
春樹は、見かけ上無傷な身体をことさらにアピールする
その対象が結弦ではなく、実際は今ちょうど入ってきた春香であったことに
誰もその意図に気づかなかった
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