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八章 神の名を呼ぶ (1/25)
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気づくと暗い場所を漂っていた。
夢の中にいる感触。
もう何時間も味わっていたから、すでに慣れていて。
ゆったりと流れる空間に身を任す。
揺られているうちに、泣きたい気分になった。
リュウの死を見て、母さんの最期を思い出した。
・・・母さんもリュウみたいに思っていたのかな。
リュウの亡くなった状況は実際は良くわからなかったけれど。
理由は同じ、力の使いすぎだ。
そして、大切な人を守るためで。
俺は・・・本当はずっと、母さんの死を・・・母さんが、自分の命に代えてまで力を使ったことを許せなかった。
自分が守られたこと、守られたほかの神たちが居たこと、それがわかっても・・・自分の命を捨てるような真似をしてまですることかと、本当は納得なんてできなくて。
そして、・・・なにより、一緒に居ることを選んでくれなかったことが、悔しかった。
でも、そんなことを思う自分のことがずっと嫌だった。
守られたこと、大好きな神たちが無事だったこと、もちろん嬉しかった。
だけど、捨てられたような気持ちが心の奥にずっとわだかまっていて。
母さんは、力を使った。
つまり力を自覚していたってことで。
幼い記憶に残っているだけだけど、悩んでいるとこなんて一度も見たことがなかった。
逆に、どこかあけっぴろげで明るくて、いつも笑っているような印象で。
だけど、違ったのかもしれない。
・・・リュウはどこか母さんに似ている気がした。
いつも笑っていて、動じない余裕が見えて。
最期は守れる力を持ったことを喜んで逝った。
母さんも同じだったのかな?
リュウみたいに、守れたことを喜んで逝ったのかな?
・・・それなら、良かった。
思って、涙が零れた。
ずっと許せなかった母さんのことが、少しだけ許せた気がした。
そう思えたことが、嬉しかった。
不意に頬に落ちる涙の感触がした。
どこか染み渡るような温かさ。
久しぶりに感じた、リアルな感触。
あぁ、夢が覚めるんだと思った。
徐々に現実の感覚が近くなる。
微睡みと現実の狭間の心地よさに意識が持って行かれる。
握られる手の感触がした。
マナだと直感的に思ってホッとする。
俺が倒れる直前に泣きそうになっていた顔を思い出す。
・・・きっと誤解したんだろうな。
過去を知って、マナが意外にも臆病で泣き虫なんだと知った。
・・・また泣いてないといいけど。
勘違いだからって、リュウみたいに頭を撫でてやろうと思った。
だけど、意識が揺れる。
本当の夢に落ちそうになった。
ふと、声が聞こえた。
マナの声。
微かに聞こえる声。
・・・なのに、なぜか鮮明に耳の奥に届く。
けれど、言葉を認識する前に。
意識は夢の狭間に落ちていった。
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