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七章 マナ (1/14)
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これ以上、驚く事なんてないだろうと思った。
でも、聞かない方が良かった。
気楽に尋ねた自分の言葉を、あんなに後悔することになるなんて、この時の俺は思いもしなかったんだ。
マナが笑顔を消して真顔になった。
後で思えば、マナもひどく緊張してたんじゃないかと思う。
「私は・・・」
「火の神だ」
その瞬間、マナの周りの空気が変わった。
瞳に舞う色は朱と金。
炎の朱色と火の粉の金色。
艶の有る黒髪は爆ぜる直前の熾きの色。
そして、燃えさかる炎を目の前にしたような熱の揺らめきを肌で感じた。
陽炎で、マナの周りが揺らいで見える。
実際の火はどこにもないのに。
周囲の見事な紅葉の色と、マナの発する炎の気配が混ざり合う。
一瞬で炎に巻かれた、あの瞬間の光景が目の前に広がった。
ゾクリと自分の内側から突き上げるような恐怖が沸き起こって、全身を支配する。
体が震えて止まらない。
喉の奥が塞がったような感覚で息ができない。
頭から冷たくなる感覚。
あ、ヤバい・・・
「湊!?」
霞む視界の中で、マナの悲鳴のような声が聞こえた。
倒れた衝撃も鈍くしか感じない。
意識がなくなる瞬間。
泣きそうなマナの顔が脳裏をよぎった。
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