インスタ映えしない恋
[2.](27/27)
***
「なんだよ」
電話。冴木から。
出たら無言が続いた。
怒ってんな。
あの写真か。
てことは成功?ってことか。
………どう考えても失敗だよな。
いくらブスだからって、あれはやりすぎた。
『…』
「おい、いい加減にしろ」
『悠がいい加減にしなよ。』
うわ、完全にキレてんな。
「……あれは」
『冗談でもやっていいことと悪いことがあるよ。あれは伊波さんに失礼だよ。』
クソが。もう嘘だってバレてんじゃねーか。
俺の努力返せよ。
「…ああ、わかってる」
『謝ったの?』
「謝った」
けどまあ、あれは伊波の中で謝罪には入ってないだろうな。
あー、これだから女はめんどくせーんだよ。『何が悪かったって思ってるわけ?』だとよ。諸々全部含めて悪かったって思ってるから謝ったんだろうが。のくせに一から十まで言いやがって、めんどくせー。
『悠のことだから、めんどくせーとか思ってるんだろうけど』
「……」
ほんとこいつエスパー。
『誠意込めて謝ること。』
「……わーったよ」
声がマジだ。
『財布も返すこと。』
……あ、忘れてた。
カバンを見る。しっかりと黄色い革財布が入っていた。
「ああ。…ん、つーかなんで知ってるんだお前」
『…やっぱりね。…駅で途方に暮れてた伊波さんを、さっき家まで送ってきたところ。』
「そ、うか」
色々、裏目に出てやがる。
『……本当にちゃんと謝りなよ。』
「分かったって言ってんだろしつけーな」
『伊波さん、財布がない理由、ホントのこと言わなかったんだよ』
「…は?」
『家に忘れたって言ってた。昼食べた時、財布持ってた気がしたから、おかしいなって思って。財布奪って身動き取れなくするの、悠の常套手段なの思い出したから。そうかなって』
……こいつ本当よく知ってんな、俺のこと。
にしても。
「なんのために」
『悠の立場をこれ以上悪くさせないためでしょ』
………あいつ、バカだろ。
「意味わかんねえ」
『だよね。俺もそう思う。俺だったらきっと無茶苦茶に悪口言ってたと思うよ。寒い中、上着はカーディガン一枚で、足怪我して靴脱いで歩いて、駅に着いたと思ったらお金がなくて電車乗れなくて、ずっと外で震えてたんだから。』
「…」
クソ、なんなんだよ。
『悠、今回は伊波さんの優しさに免じて、許してあげるけど。次あの子を踏みにじるようなことしたら、許さないからね。』
プツ
電話が切れた。
「あいつ、マジじゃねーか」
完全に俺、火に油注いだだけじゃねーか。
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