White Soul
[3章 夢幻の間](1/4)






心結「……はぁ」


心結は1人、大きくため息を付く。理由は簡単で、あまりこの場所には頻繁に来たくは無いからだ。

目を開けると、真っ白な空間が広がっている。そのあちらこちらに、様々な魂器が見えた。この景色にももう慣れている。

此処は夢現の間(むげんのま)。白澤家の先祖の魂の拠り所。白澤家の者の精神世界。簡単に言えば、此処は心結の夢の中という事になる。


心結「夢の中って言っても、睡眠にはなってないからただ疲れるんだよなぁ……だから、あまり学校中とかに呼ばないで欲しいんですけどね……桜番傘さん」


心結は少し嫌みったらしく、ある場所を見上げて言った。そこには、先程心結が使った継承魂器、桜番傘をさしてふわふわと浮かんでいる1人の男性がいた。


?「桜番傘は長いから、桜花(おうか)って呼んでって言ってるだろう?それとも、ひいお祖父って呼ぶ?」


その男性は、人の良さそうな顔でそう言った。髪と目は桜番傘と同じく桜色で、着ている和服も桜色だ。履いているのは下駄で、何とも番傘と合っている。


心結「『僕は君の曾祖父であり、曾祖父では無い。だからひいお祖父って呼ぶのは変かな』…って、初めて会った時に言ったのはそっちでしょ?桜花」


心結がその男性…桜花を呼ぶと、桜花は嬉しそうに笑い、心結の前に降りてきた。


桜花「そう、僕は僕の持ち主、君の曾祖父の魂器だ。記憶や人格は受け継いでるけど、彼本人であり、彼本人では無いからね」


彼の言う通り、彼は、継承魂器 桜番傘その物だ。持ち主本人であり、持ち主本人では無い。

此処は、白澤家の継承魂器と、白澤家の者の精神世界がリンクした世界。此処では、彼ら継承魂器は持ち主の姿を形取る。

持ち主本人であり、持ち主本人では無いと言うのは、少し白澤家自体の話をしなければいけないので、それはコラムで説明しよう。


心結「まぁなんでも良いよ…で?呼んだって事は、何か用があったんでしょ?」

桜花「いや、特には無いよ?」

心結「帰っていいよね」


ケラケラと笑う桜花に対し、心結はため息を付く。桜花は、心結が初めて契約した継承魂器だ。曽祖父の魂器という事で、心結にとって1番近い継承魂器である桜花とは、かなり長く付き合っている。


心結「多分優月が俺を運んでるはずだから、あまり世話を掛けたくないんだって」

桜花「優月ちゃん、本当にいい子だよね〜…孝行(たかゆき)の曾孫とは思えないよ」


孝行と言うのは、優月の曾祖父に当たる人で、まだ生きている。桜花とは生前、互いを競い合った仲らしい。心結と優月の様な関係だったと、心結は聞いている。


桜花「まぁ、少し僕とお喋りして行こうよ。ほら、早速友達出来た見たいじゃないか。話を聞かせてよ」


友達と言うのは、恐らく春樹の事だろう。春樹とは桜番傘で戦った為、春樹の存在はバレている。


心結「はぁ……ちょっと話したら戻るからね」



- 23 -

前n[*][#]次n
/459 n

⇒しおり挿入


[編集]

[←戻る]