尾を喰う
[chapter1 loop](1/2)





ネットで調べてみたんだ

僕という人間はあまりにも他人が苦手で、上手く社会に溶け込めない、いわゆる【社会不適合者】という奴かも知れない。

昔から何をやってもダメな奴だった
勉強は嫌いでいつも鉛筆を握る事から逃げてきた
もちろんスポーツも熱心に打ち込んだ事もない
人と話せばどもる一方でなかなか上手く人と話す事も出来ない
顔は…きっと普通であってくれと、そう願うばかりだ



僕には、取り柄が無い
何時でも虚勢ばかり張って
自分を装う事に必死で。






そんな自分と不平等な世の中への不満が溜まり過ぎていたので、唯一親密な関係にある彼にわざと嫌味な言葉を投げつけた




「常々思うよ、出来れば人の幸せは見たくないものだ。僕は物事素直に喜べない卑屈な人間だからね。」

『?うん』

「僕に不幸が訪れる傍ら、満たされた人間が笑顔で通り過ぎる事が不愉快でしょうがない。」

『へぇ?』

「君も同類だよ。僕は人に好かれなくて取り柄もなくて顔や容姿も…なのに夕(ゆう)、お前は」



段々と喋ってる内に僕は僕の事が虚しくなって口を閉じた



『お前は何時まで思春期を延長する気なんだよ。そろそろ延滞料金払った方がいいんじゃねーの?』


「ほんと癪に障るな。お前に話すといつもこうだ、ムカつく。」




わかってるんだ。
わかってるのについつい話してしまう
僕にはこいつしか話し相手がいないから、唯一素を出せるから依存せざるを得ないんだ。

いつもの事ながら不貞腐れる僕をよそにアイツは鼻歌を歌い出す


「おい、慰めてくんねーのかよ」

『ん〜光(ひかる)くんもう気は晴れたかい?』

「…お陰様で」




僕は自分の名前が嫌いだ。

何でこんな根暗で地味で冴えない人間に、【光】だなんてさも戒めかのような残酷な名前が付いたんだろう
夕みたいな楽天的で周りに人が集まってきて…それにかっこよくてモテる奴に付けるべきだ

人はおそらく名を持った所で所詮、大勢の人間を見分ける為の区別にすぎないだろう
何かを願ったところできっと荷が重くなるばかりだ

もういっその事この身体に個体識別チップでも埋め込んでさ?無言でスキャンしてくれよ…



『…おーい。さっきから何ボーッとしてんの?』

「何でもない、ちょっと考え事してた」

『もっとこう、何て言うかさぁ?光は何でも頭で物事考えすぎなんだよ。少しは楽に生きようぜ?』

「無理。逆に考えずに生きれる方法教えて」

『よし!まぁ機嫌なおせ!気分転換にいつものとこ行こうぜ!』

「ふん、しょうがないから付き合ってあげるかな」







僕は夕に悪態をつきながら、渋々付き合う振りをしてみせた

ほんとはこんな自分と一緒に居てくれる夕の存在が、ただただ心地よくて嬉しかった。




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