割れた花瓶
[水仙(黄)](1/1)
「篤紀(あつき)、今日みんなで放課後集まるんだけどくるー?」
「あー、どうしようかな。」
いつもと変わらない昼休み。
背伸びをした化粧に短いスカートを履いた女子が俺に話しかけてくる。
その内容は大体が放課後の遊びのことだったり、はたまたちょっとしたおアソビのことだったり。
(俺は都合のいい玩具かよ…。)
人より顔がいい自覚はあるけど、いや…俺の性格のせいもあるんだろう、よく軽いと笑われる。
だけれどここまで同じことを繰り返していると、つまらないというか、逆に面白くなってくるものだ。
だから、ついつい了承してしまうのだけど。
でも俺にはまるで母親みたいな、いや、監視役のような同級生もいる。
「その話ちょっと待った。」
「げ…洋臣(ひろおみ)。」
身長は俺より少し小さいけれどそれでも平均的な方で、顔立ちはきりっとしていて俺の家族お墨付きの男前、高木洋臣。
「篤紀…お前今日は彼女の…ほら、なんつったっけ、マミ?じゃなくてマコ?…違うな、マキ…ちゃん?とかなんとかの家に行くって言ってたよな。」
遊びの恋愛とかを嫌う、お堅い正統派な洋臣。
唯一の欠点は人に興味がなさすぎる。
つまり自分のテリトリーになかなか人を入れたがらないし、入れる人間も一握りなのだ。
「お前相変わらず人の名前覚えないのな…マナだよ。いいんだって、あれは俺の顔が好きなだけだし。」
「…そんなこと言ってまたご自慢の顔に真っ赤な張り手跡付けてきたって慰めてやらないからな。」
こうして無愛想気取ってるけど、これでも俺の心配をしてくれてるんだ。
まあこんな風になったのも…出会って三年ちょい、ずっと粘り強く関わってきたからだろう。
最初はもっとつっけんどんな態度でさ、どんなに話しかけても一言二言しか返ってこなかったんだよ。
「あははっ、どうせ俺のこと心配しないでいられないくせに。」
「…あほか。」
「そんなところが好きよ、ひ、ろ、お、み、ちゃん!」
「呆れた。お前なんて彼女にぶん殴られちまえ。」
なんやかんや言ったってこのつまらなくて何気ない毎日が大好きだ。不便なことや気に食わないことがあったとしても。
くだらない事で笑える。
それほど幸せなことはないから。
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