東方黄明譚
[人里から、別の場所へと](1/7)
フラーウムを取り込み、クーを式神にして数日後、僕たちは人里に居た。
「…結構賑やかですね」
「幻想郷で唯一の能力を持たない人間達が暮らす場所…ってことになってるからね。…とりあえず、当分は里の中ではそれ、取っちゃダメだからね」
「はい、主様」
クーは、自分の魔力で作った帽子を被っている。黒のもこもこした帽子で、とても似合っている。ただ…
「…耳まで入れなきゃいけないから、ちょっとむずむずする」
「ん…人里にいる時か、そうだな…いろんな所に知られるまでは我慢かな」
「…わかった」
「僕はこのままでいいのかな?」
帽子の上に座っている、手のひらサイズのフラーウム。膨大な魔力をちょっとだけ分身にまわせないかと聞いてみたところ、こうなった。ちなみに、サイズは自在に変えられるのだが…
「ん…大丈夫だろうな。…なんかあった時は妖精に懐かれたって言っとくし」
フラーウムの扱いについては、精霊ではなく妖精という風にしてあるため、有事の際以外はこのサイズになるように言ってある。
「でさ、どこに向かってるの?」
「寺子屋。慧音さんが用があるって…そういや、アレと戦ってから顔見せてなかったし、心配されてるだろうなぁ…」
「あー、僕を助けた時?」
「…私と、戦った後からだね…運んでいった時、泣きそうな顔になってたよ」
あの後、式神になる前のクーの背中に乗せて一度寺子屋まで運んだらしい。
そこで怪我の状況を見てから屋敷に運び込んだみたいだ。
「申し訳ないことしたなぁ…とりあえず、謝る必要があるね。…慧音さーん」
途中に会った子供から聞いた所、今日は寺子屋は休みらしい。すぐに出てきて…あ、走ってきてるな。
「…黄!」
「あ、慧音さん。心配かけて…」
「ずっと顔を見せないとは、心配したぞ馬鹿っ!!」
直後、慧音さんの額が超高速で飛んできて、自分の額に激痛が走った。
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