ビーノの短編集
[惚れ薬](1/4)
【惚れ薬】

 ある日、S氏は近所で有名なM博士の家を訪ねた。以前貸したお金を返してもらうためだ。

 ガチャ!

 博士の家は呼び鈴など無い。登録された人間以外は入れないし、登録されていない人はどういう仕組みなのか、家の前に立つと自動ガイダンスが流れて誘導してくれる。S氏は登録されている人間だ。

「出来た!ついにできたぞ!」
 部屋に入ると同時に博士の歓喜の声が聞こえた。

「お?何が出来たんだい?」
 S氏がたずねた。

「おっと来てたのかい!こりゃいかん!内緒じゃよ。」
 博士はあわてたように言うと、急いで机の上を片付けだした。

「私にも内緒なのかい?気になるなぁ。」
 S氏はそう言うと近くの椅子に腰をおろした。

「誰にも内緒だ。今日はどうしたんだい?」
 博士が黄色い歯を見せて笑いながら問う。

「せっかく作ったのに誰にも言わないのかい?怪しいなぁ!今日はお金を返して貰いに来たんですよ。」

「しまった!今日じゃったか!準備しとらんわ。」
 博士が頭をかきながら申し訳無さそうに答える。
 そこでS氏はピンときた。



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