ビーノの短編集
[虫けら](1/1)
【虫けら】
僕は名もない小さな虫けら。とある家でかわれている。と、言ってもペットというわけではない。餌をもらっているだけだ。
僕のこと、気づいてないふりをしてくれているが、本当は優しいご主人様。いつも大きな銀の器の中に、水と食べ物を入れておいてくれる。古くなったのはきちんと捨ててくれるし、僕が溺れたりしないように、ご飯は網に入れておいてくれる。
こんなに素敵なご主人様だけど、僕はあくまで虫なんだ。子孫を残さなきゃいけない。でも、さすがに沢山の子供をご主人様は養ってくれるだろうか……
そういえばご主人様は、「悩みがあると屋根の上に登って、空を見上げてくもを眺めている」と変な黒い箱に話しかけてたなぁ。僕もやってみよう。
僕は屋根の上に上るために移動を始めた。幸い僕は小さいから細い隙間を通って屋根裏に入る。
屋根はどこから上がれるかな?キョロキョロしながら歩くと、足が引っかかった。見ると白い紐が絡みついている。
やれやれ………外す前に一休みしようとごろんと横になる。
目の前には大きなくもがひろがっていた。
END
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