ピンキー!
0.なおちゃん(1/12)
ピンポーン
「おかあさーん、誰か来たよー!」
ピンポーン
「おかあさーん!!!」
いつもならいるはずのお母さんがいなくて、慌ててリビングのインターフォンに駆け寄る。
手を上げるけど、かすめる程度。
ピンポーン
「わっ、ちょっと、待って…」
キッチンの隅に置かれた赤い踏み台を引きずって、それに登る。
ようやく届いたボタンを押すと、真っ暗だった画面に一人の男の子が映った。
「はい、須賀です」
俯きながら青いスニーカーで地面を蹴っていた男の子が、パッとこっちを向いた。
『こんにちは、隣に引っ越してきた直嶋です』
息が止まった気がした。
真っ黒に日焼けした肌
白いタンクトップ
眉毛にかかるほどの真っ黒い前髪が、汗で額にくっついていて……
向こうからは見えていないだろうインターフォン越しの私に、大きな口を開けてニカっとイタズラそうに笑った。
なおちゃん、小学三年生
私、小学一年生
初めて見たその時から、私はなおちゃんが好きだった。
一目惚れだった。
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