殺したいほど愛してる

第四話 師匠と弟子(1/1)




「本日は無礼講だ!存分に飲んで騒ごうではないか!」


近藤の掛け声と共に遊郭での宴会が始まった。

土方は気持ち悪い愛想笑いもそこそこに、女を2人呼んで鴨の隣につかせている。両手に花の状態で、鴨の顔も緩みっぱなし。なんともみっともない⋯。


「酒とはなんとも恐ろしいものじゃな。」

「君はお酒は嫌い?」


柔和な笑みを浮かべた優男が声を掛けてきた。

妾の後ろで眉をぴくりと動かした八尋、君弘を手で制してから、そいつが座れるように横にずれた。


「初めまして、ヒサノア。僕は沖田総司。」

「知っとる。一番組の組長じゃな。」

「さすが、情報収集は既にお済みのようで。」

「先程の質問じゃが、あの状態の鴨を見れば、誰でもそう思うじゃろ。」


ちらりと視線の端に鴨を映す。

鴨は両脇の女の胸を揉みつつ、その大口に休むことなく酒を注いでいる。

うむ、やはりみっともない。


「まぁたしかに、あれは酷いね。
でも程々ならお酒は美味しいし薬にもなる。」


沖田はそう言って妾の杯に酒を並々と注いだ。

ふむ、なるほど。邪魔をされたくはないというわけか⋯。

妾はクスリと笑って、それを一口で飲み込んだ。


「良い酒じゃ。
礼として、そなたにもついでやろう。」




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