とうとう試験が終わり、俺は重い荷物を下ろしたような開放感に浸っていた。もちろんそこには、この後訪れるイベントへの期待感等も含まれていたことは言うまでもない。
そんなホームルーム前の時間、俺と慎太郎のところへやってきたのは合田さんだった。
「ねー、お二人は今日この後暇してない?」
なんということか!
この台詞の後に続くとしたら普通に考えれば何かのお誘いであることの察しはすぐにつく。
「俺らこの後よしき達とカラオケ行くんだよな。絵美子も来る?」
逆に誘い返す慎太郎。
「あ、そうだったんだ!そうか〜。男だけでカラオケ?」
「いや、前田さんとか女子も何人か来るよ。」
「ふーん…」
合田さんは表情を変えずに少考していた。
「カラオケは遠慮しとこうかな。」
そこへ横から他の女子が声をかけてきた。黄色い声とまでは行かないけど割と近しい感じだから肌色い声とでも言ったらいいのだろうか。
「来栖く〜ん、今日来てくれるんだよね〜!?」
「むっちゃ楽しみー!」
声の主は、吉川さんと渡辺さんだった。その声はすぐにこちらにやってきて、その瞬間、合田さんは一歩引いたような気がした。
「おー、行く行く。てか俺は女子が誰来んのかたった今わかったわ!」
「えーマジでぇ?聞いてなかったの?!」
「そうそう、よしきに任せてたからさ。」
そんな感じで慎太郎と女子が話してると、合田さんは俺に対して小さく手を上げて、
「じゃまたね。」
とだけ言って席に戻っていった。それを軽く目で追う吉川さんと渡辺さん。
「ねぇ、もしかして合田さんも誘ったり…してるの?」
「あー、さっき誘ってみたけどカラオケは遠慮しとくってさ。」
「ふーん…そうなんだ。」
この返しは見覚えがあるような。
そうだ、さっき合田さんがした返しもこんな感じだった。女子は女子ならではの人間関係や面倒臭いいざこざがあるのかもしれない。よく言うではないか、女の裏側は恐いと。
その点、普通の男子は仮に仲良くないか嫌なやつが混じってたとしても、女子が数人来るとなればほいほい参加するような人種である。この男子のアホさ加減は全くもって単純だ。