そんなハーレムなんて存在しない!!
[高校2年生に五月病を患っている時間などない(前編)](1/14)

その日はなんでもない穏やかな5月のとある一日だった。
カバンから教科書を出して机に入れたりしているところに、オタクな友達、慎太郎が無駄に高めのテンションでやってきた。

「よ〜ポット!ご機嫌いかがかの?!」

人の機嫌を伺うなんて、自分がよほど機嫌いいのだろう。表情からも滲み出ている。というか若干ニヤけ気味なのが少し気持ち悪い。
「別に普通だね。」
対して普通より若干冷めたテンションで返す俺。
「なんだ普通かぁ。俺は上機嫌ルンルンなポットを見てみたいんだがな。」
表情だけでなく台詞まで気持ち悪いのは特にいつものことというわけではなく、なんだか今日は変なテンションにとりつかれているようだ。

ところでポットというのは俺のあだ名だ。命名者は慎太郎、というかこの名前で呼ぶのは慎太郎だけだが。
俺の名前が保人(やすひと)なのだが、それを初見で読みきれずに出た答えがそれだった。以来ずっとそう呼ばれてしまっている。
慎太郎はカバンを下ろし、俺の前の席に座る。思えばこいつとの付き合いのきっかけは出席番号からくる席の並びなわけだが、このクラスの担任は何を考えているのか、まだ一度も席替えをしてくれていない。

「昨日の”おかちい”見たかぁ?」
席についた慎太郎は早速そのままのテンションで雑談をしてきた。
「いや、だからその時間とっくに寝てるんだってば。」
「じゃあ録画してあるから今度見に来いよ!」
「えぇ…ありがたいけど、わざわざ家まで行くのかよ。」
「さすがにハードディスクを学校に持ってくるわけにもいかんしな、色んな意味で。」
雑談と言っても、オタクである慎太郎の口から出てくるのはアニメ談義であることが非常に多い。昨日見たかと言っている”おかちい”も、決して『おかしい』をふざけて言っているのではなく、これはアニメのタイトル名だ。これまた慎太郎から入れ知恵された知識ではあるが、最近のラノベやアニメタイトルは公式な略称がつくられることが多いらしく、この”おかちい”も、『幼馴染みの彼氏がチャラ男なのは嫌だ!』の略称である。



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