私は彼の所有物
[獅子](1/87)




【愛は世界を救う】
って言葉をよく聞く。
愛があれば世界は平和になるらしい。
変わるらしい。
……でも、私は愛は憎しみを生むものだと思う。

今、目の前で起こっている出来事がそうだから。


「おかえり」


私はその言葉に口を閉じてしまう。
ピンク色の外壁、ネオンに光るその元ラブホテル。
その見慣れた建物の玄関に座り込む純くん。

いつものように笑顔を浮かべているけど、その?には涙痕が見える。
ケイさんと過ごした時間は少なかったけど、ここに着いた時には日は暮れていた。
薄暗く寒い外で膝を抱えて玄関に座っている純くん。
……もしかして私が飛び出してからずっとここにいたのかもしれない。
そんな事さえ感じてしまうぐらいに純くんの鼻は赤かった。

私は好いてくれていた友達を裏切ってまで自分の恋愛を選んだ。
そんな私を罵倒するでも無く、笑顔で迎え入れてくれた純くん。
どこまでも優しい純くん。

私はそんな優しい純をことごとく傷付けてしまう。
いっそ純くんに嫌われたい。
もう友達辞める、そんな事を言われた方がマシ。
ここに来たのはただただ荷物を取りに来たかっただけ。
ただただ、ソファに置いてあるタイツを貰いに来たかっただけ。

まさか、純くんが玄関で待ってるとは思わなかった。



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