私は彼の所有物
[子宮の正しい使い方](2/25)




その純くんの言葉でここから学校までの道程を頭の中でイメージしてみる。


……行けないかも」

「でしょ」


純くんはまたクスッと笑った。
そしてダイニングテーブルの椅子から立ち上がりキッチンに移動する。


「コーヒー淹れてあげるから着替えてなよ
コーヒー飲んだら急いで行こ」


にっこりと微笑んでそう呟いた純くん。
私は頷いてまた衣桁と壁の間に入る。
誰が置いたのか、いつ置いたのか分からないけど、衣桁の近くには電気ヒーターがあった。
少しだけ床が冷えるためヒーターのスイッチを入れる。


「純くんありがとう」

「いいえ」


私の“ありがとう”がヒーターの事を指しているというのが純くんに伝わったのかは分からない。
けど純くんはいつもの優しい口調と声色でそう返してくれた。

衣桁と壁の間でシワになった服を脱ぎ畳む。
そして昨日着ていた服を着る。
丁度パンツを履く瞬間だった。


……コーヒーできたよ」

その声に顔をあげる。

「ありがとう」

純くんの手には白いマグカップが2つ。
朝の光に照らされた湯気が見える。


……ねぇ、菜緒ちゃん」

「ん?」

「話していい」


ダイニングテーブルの椅子に座る純くんがそんな事を明るい声で言う。
いいよ”、そう小さく私は言い返した。
そして素早くパンツとニットを着て衣桁から出る。


「今から会いに行く人に操られちゃ絶対に駄目だよ」


優しい優しい声でそんな事を言う純くん。
でもキッパリと言い切った。
その後に微笑んで“コーヒー飲んで”と続く。
私はダイニングテーブルに置いてあるマグカップを手に持つ。


……


私は何も言えない。
震える唇にマグカップを当てる。
暖かさとインスタントコーヒーの味が口にじんわりと広がった。


……こんな朝に呼び出すなんて非常識だよ」


冷たい声が聞こえてくる。
純くんの悲しそうな目を初めて見た。


「さ、行こうか」


一瞬のその目を隠して笑った純くん。


- 78 -

前n[*][#]次n
/411 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]