私は彼の所有物
[アーティストとは…](1/34)



「寝てる奴らは残念だけどここ大事だからな
起こす気無いから起きてる人はきちんと聞け
君たちはここの学校を出たらこのテーマにぶち当たる」


ホワイトボードに書かれた文字。


【アートとは?】
【アーティストとは?】


「君たちはなんで自己表現がしたいわけ?
素人とアーティストの違いはなに?」


教壇で腕を組んでそう言う先生。
現役の時代があった人の言う言葉には重みがある。
その為か教室は無音状態。


「今、君たちが言えなかったように正解は無いんだよ
このテーマの定義は無い
そこが難しいでしょ」


少しの間を置いて淡々と喋り出した先生。


「でもね、自分なりの答えを見出さないとこの業界では生きていけない
極論、先に見つけ出した者が勝ち」


先生の話を一生懸命聞いている、その時。
私の肘に何かが当たる。
ちらりと見ると肘をツンツンと突く純くんの指が見えた。

なに?

と声を出さずに口を動かして、純くんに訊く。

すると純くんは私のノートにさらさらっと文字を書いた。


【このテーマ難しいね】


その言葉の後に困った顔の絵文字が付け加えられた。
私は小さく頷いて“確かに”と純くんが書いた文字の下に書く。

そういえば、ケイさんともこのテーマについて話をした事がある。


菜緒、アートってなんだと思う?”


ケイさんと昼寝をしてから数日経つ。
連絡は無い。
それでも私の頭の中はケイさん一色。


- 43 -

前n[*][#]次n
/411 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]