私は彼の所有物
[世界が彼を見つけた](1/14)
「あぁ、今日発売日か……」
本屋に入るとすぐ見つけることができた。
彼の写真集。
写真集の表紙には女性がベッドに寝そべり、こちらに背中を向けている。
浮き出た背骨。
色は異常なほどに白い。
今、話題のその写真集。
買うのに戸惑っている私をよそに、何人もの女性がその写真集の前で立ち止まる。
そして手に持ち開く。
棚に戻される事無く財布と共にレジに向かう。
「……」
私は小さく溜息をついて本屋を出た。
自分の裸見てもしょうがない。
ましてや、本当に私かどうかなんて分からない。
私じゃないのもあるんじゃないかな?
買う勇気は無い。
見たくも無い。
コートのポケットに手を入れる。
振動するスマートフォンに手がぶつかった。
スマートフォンを取り出し、液晶画面を見ると“彼”の名前が見えた。
心配かけたかな。
何も言わないで出てきちゃったから。
「……もしもし」
〈どこにいるの?〉
怒ってるんですか?
それとも心配してるんですか?
無感情な声だけじゃよく分からない。
〈早く来てよ
君がいないと仕事出来ないんだけど〉
……そうですね。
仕事出来ないですよね。
「すぐ行きます」
〈走ってよ
君じゃないと駄目なんだから〉
あぁ……。
その言葉好き。
今までの憂鬱が吹っ飛びました。
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