朔は、流しの前に立ちながら、ガスコンロにやかんで湯を沸かすと、インスタントのコーヒーをスプーンで掬いマグカップに入れた。
そして、お湯が沸くと、カップに注ぎ、昨日買ってきた菓子パンと共に、自分のデスクへ、食べるために運んだ。
昨日彼女に貰ったチョコレート
朔はふと思い出したように、クローゼットに向かうとスーツのポケットからそれを取り出した。
疲れているときには甘いものがいいらしい。だから、チョコレート
ただ、本当にそれだけだったんだろうか?
メーカーの印字が入った銀紙に包まれたそれは、一見何の変哲もないチョコレート菓子だった。
女性社員の比率が高い朔の職場では、お菓子を貰うことは度々あったが、
どうも、この一粒には違う意味が込められているような。
朔にはそう思えてならなかった。
だから、昨日は頂かず落ち着いてじっくり味わって食べたかったのだ。
コーヒーとパンを食し、一息ついてから銀紙を外すと
人差し指に摘まみ、それを舌に乗せた。
チョコレートは甘い
そんな当たり前のことは誰もが知っている。
しかし、彼女に貰ったからだろうか、
そのミルクチョコレートは、
甘く
少し苦かった。