法廷戦士
[出会いの法廷](1/13)
その子は、突然私の前に現れた。
留置所にいる16歳の少年。弁護士の破坂颯人に、2週間後行われる法廷で弁護してほしいと頼んだのだ。
「まずは何があったか説明してもらおうか。」
少年は俯いたまま、何も言わなかった。事件から1週間たった今でも、気持ちの整理はまだ落ち着いていないようだ。
ある程度は刑事から聞いたが、刑事は法廷で敵になる。なるべく被告人本人から聞いた方が言いと師匠の教えがあった。
「…話したいときがあったらいつでも言いなさい」
弁護を頼んだのはそっちなのに何も話さないのか、と颯人は内心思う。そんなの口に出るわけがない。また、颯人は腹黒なので本心はなるべく隠しているのだ。…昔のこともなんて。
颯人が立ち去ろうとする。
「あの…!」
少年が顔を上げて、颯人を止める。
「お父さんが、死ぬ前に…言ったんです!ぼ、僕にだけ!!」
ーーー困ったことがあったら、破坂法律相談事務所へ行きなさいーーー
「だから、頼んだんだ…!で、でも、本当に…信用していいのかな…?破坂さんの事」
飯田裕太の声を初めて聞いた颯人。もう、気持ちの整理はついていた。颯人は確信した。
「君は絶対に親父さんを殺していない。それを私が立証する。私が、最高の弁護をしよう」
初めて颯人の前で笑った。その顔は、本当に颯人の事を信用しているようだった。
「話してくれるな?あの日の事」
裕太は大きく頷いた。
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