すみれのように
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私の名前。
≪すみれ≫は私を唯一愛してくれた父につけられた。



すみれの花言葉
謙虚
小さな幸せ



私はその花言葉通り小さな幸せの中で慎ましく幼少期を過ごした。



母は私を産んですぐに、ろくに私を抱くこともなく、外に男の人を作り、私と父を残し躊躇いもなく出ていった。


父はそんな私を不憫に思い、仕事を変えてまで私と共に過ごす時間をたくさん作ってくれた。


それまでバリバリ働き、家族に不自由のない生活をと考えて稼ぐことだけを考えてきた父は、部署を移り、出世の道を自ら閉ざし、私と生活することを選んでくれた。

そのため、あまり贅沢はできなくなった。



でも、父の目論み通り、それは私にとって、すごく幸せな結果になった。



公園でシャボン玉をして、滑り台で一緒に滑って尻餅をつき、たまに外食をしてお子さまランチを食べた。



家ではお風呂に欠かさず一緒に入り、父の作った不器用な卵焼きで大笑いし、父の腕の中で眠りについた。



そのお陰で、私の幼少期の思い出は小さな幸せで溢れていた。
全てが私の中で整っていて、転んで擦りむいた傷がズキズキ痛んだときくらいしか泣くことはなかった。


父が道端で倒れ、そのまま亡くなったのは8歳の冬だった。



突然のことで、親戚は大慌てだった。



私のことを陰でこそこそと哀れむ声が嫌でも耳に入ってきた。



父の遺影と棺桶を前に、私は呆然と立ち尽くした。



それまで積み上げられてきた小さな幸せが、指の間からポロポロと落ちていった。


自分の未来とか、これから起きるであろう自分の不幸などどうでもよかった。



ただただ、父を想っていた。



二人で歩んできたこれまでをただただ想っていた。




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