みりたりーまじっく!
[第1話 僕はこの世界を離れます。](1/16)
「ウィル、重要な話がある。この後すぐに長官室まで来てくれ」


突然、カルノア長官にそんな事を言われたのは軍議の終わった夕刻だった。



怒られる。



まず第一にそんなことを考えてしまった。


何度か彼女には怒られているのだが、怖いなんてもんじゃない。

そもそもただ呼ばれただけなのにこんなことを考えてしまうのは我ながら情けないところであるけれど。


「やばい……。僕なんかやらかしたっけなぁ……」

周りでは、軍議も終わったことで緊張が解けて仲間と談笑している人が多い。

特に今の軍議は第一部隊から第六部隊の隊長、副隊長に加えて長官が入る月例の軍議だ。

そのため僕の出席すべき軍議としてはトップクラスに緊張感があり、いつもなら僕も気楽になっていた事だろう。

ちなみに、第一部隊から第三部隊までは野戦や遠征を、第四部隊は隠密と潜入、第五部隊は本部拠点防衛をそれぞれ担っている。第六部隊に関しては目的が明かされていない。一部の人間しか知らされていないそうだ。

一応国に属する軍であり、ほとんどの場合国の治安維持や暴徒鎮圧のために活動を行う。というか、僕の知る限りでは他国との戦争は今まで起こっていない。

まあ、それはさておき。

いつもなら軽い気分のはずが長官の一言で僕だけが重い気分なのだ。


会議室を抜け、気分と同じく重い足取りで廊下を進む。

そして、突き当たりである長官室の前に辿り着いた。

色々とここ数日での自分の行動を思い返してみたが、呼ばれた理由は結局浮かばない。


はっきり言って帰りたかったが、来るのが遅いとまたお叱りのタネが増えてしまうので意を決してドアを開けた。



「失礼します。第二部隊副隊長、ウィル=ロワールです」

「おお、待っておったぞウィル」


椅子に座り何かの書類に目を通していた彼女、カルノア=スラー長官が顔を上げる。


眩しいほどの長い金髪。


どうしようもなく整った顔とそこから醸し出される凜とした雰囲気。


やはり、一人で対面すると改めて威圧感の様なものさえ感じてしまう。


「すみません、考えてはみたのですが呼ばれた理由に心当たりがありません。何か気づかない内にミスを犯してしまったのでしょうか」

「……ふむ。どうやら私に呼ばれることは何か怒られることだと思っているのか」

「……いえ、そういう訳では……」

「ならそんな事を言うのは止めろ。軍人たる者、自分の行動には自信と信念を持てと教えたはずだ」

「も、申し訳ありません……」

とりあえず何か失敗をしたわけではない様だ。
かえって余計な事を言って釘を刺されてしまった。







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