恋濃いコーヒー
[1.序章](1/3)



「佐和田ー、コーヒー」


「は、はい!少々お待ちください!」


給湯室に急いで向かい、
彼専用の"クリスタルマウンテン"を淹れる。

この"クリスタルマウンテン"は、
酸味と苦みのバランスがとれた上品な味で、
最高級品と言われているらしい。

それ以外は飲まないという
ルーティーン?こだわり?なのか
違う種類のコーヒーを淹れてしまったのなら、
本当に命の保証はない。

確実に首スパーン。

ストックは3つ。
棚の上に常備されている。

本当、至れり尽くせりだな。

意味がわからん。


「はぁー


深くため息を吐きながら、
専用のマグカップにコーヒーを注ぐ。

シュガーとミルクは入れず、
ブラックで飲むのが彼の飲み方。

すぐには持って行かず、
火傷しない程度に冷まして持って行く。

猫舌なんて知ったこっちゃないわ、本当。

べーっとコーヒーに向かって舌を出す。


「菜々ー、またコーヒーロボット?」


給湯室の入り口から声が聞こえる。

呼ばれる度に思う、あだ名のセンスのなさ。

舌を出したままそこを見ると
入り口の方から顔を出す夢。


顔やっば。」


苦笑いされ私もつられて苦笑いをする。

本田夢(25)は私の同僚で、地元が一緒の子。
小中一緒で、高校大学と離れていたけど、
この社でたまたま再会を果たした。
今ではなんでも話せる良き親友。


「また、ロボットやってんのー?」


私の手元にあるマグカップを見て
また課長のじゃん。と呟く。


「本日4回目だよ。なんやねんって感じ。」


「あんたいつから関西人なったの。」


マグカップを手で持ち、
程よい温かさになったのを確認して
小さめのお盆に乗せた。


「とりあえず、出してくる。」


「いってらっしゃい〜」


ひらひら手を振る夢をよそに、
私は課へと戻るのであった。








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