その朝、新城の腰は非常に重く、それというのも例の写真の話を丸木戸本人に聞かねばならないと思っていたからだ。
まさかあの丸木戸がそんな事をするわけが無いという思いと、いやでもまさかという疑念が新城の中に沸き上がっては消え、昨日の睡眠はほとんどとれていない。
たどり着いた社長室の戸を開けると、いつもと変わらぬ彼女の声が飛び込んできた。
「おはようございます。新城社長。コーヒーをお持ちいたしますね」
「おはよう丸木戸君、コーヒーの前に聞きたい事がある」
新城のその声に丸木戸の表情が強張った。明らかに新城の声のトーンが違ったからだ。
「…何でしょうか?」
新城はまず丸木戸を応接ソファに座らせて、向かい合う形で自らもテーブルを挟んで座した。
「この写真が意味する事は何なのか答えてくれないか…」
新城は昨日に雄太から受け取った茶封筒を内ポケットから取り出して更に中の写真を丸木戸に見えるようにテーブルへと置いた。
「この男はエンダイの社員だろう…一体君とはどういう繋がりがあるんだ?」
こんな事を言いたくはない。
でも言わねばならない。
「君が企業スパイなのか」
- 54 -
back[*]☆[#]next *しおり*
⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?
[
←戻る]