緋色
*鴇色 (1/11)


  *side翠*

「翠ちゃんが好きなんだ…
付き合ってくれないか?」


森崎さんの形の良い唇から、信じられない言葉が出てきた―


「――――へっ!?」

(え〜〜〜〜〜〜っ!!)

ビックリし過ぎてリアクションが乙女で無さ過ぎる…

パニクる私を前にしても真剣で吸い込まれてしまいそうな茶色い瞳に

“嘘では無い”

という事がわかる―

ギューッと胸が締め付けられて…

視界がドンドン滲んでゆく―


「…翠…ちゃん?」

ポロポロとこぼれ落ちた涙に、森崎さんが驚いている―


「ヒッ…グズッ…ズッ…」
泣き止もうと頑張ってみるも、上手くいかなくて…

俯いて…唇を噛み締めていると…

フワッと優しく両肩に触れた手に、少し力がこもって…

前に傾いていた体を起こされ顔を覗き込まれる…

「…ごめん…
泣かせるつもりじゃ無かったんだ…
嫌な思いさせて、ごめんね」
申し訳なさそうに言葉を紡ぐ森崎さんに、首を横に振って
  “違うっ!!”
と訴える―

「ち…違…うん…です」
ゴシゴシと目を擦って、涙を拭く―

「―違う?」
私の顔を覗き込んだまま首を傾げる茶色い瞳は微かに揺れていて…

「ビックリ…して…
嘘かと…思って…
でも、嘘じゃ…無さそうなのが…‥」
震える声を落ち着かせようと小さく息を吐く…
キチンと伝えようと、顔を上げて森崎さんを見つめた―


「―嬉しくて…
私も…森崎さんが

―好きです―」


やっぱり声の震えは止まらなかったけれど、精一杯の気持ちを伝えられた―





9

  しおり _




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