異体同心よう
[二人二脚](1/1)
朝の太陽の光を受け、白く煌めく病院からぞろぞろと人が出てくる。

執刀医とナースは秋人の退院を祝う心の内に、困惑を潜めながら笑顔で送り出した。この医療に携わった者なら誰でも思うのだ。――こんなに早く治るわけないと。

当の秋人自身は今まで退屈していたエネルギーを発する様に欠伸をし、医師達に一礼した。

「お世話になりました。先生達の迅速な処置で命を救われました。ありがとうございます」

腰の角度を90度まで深々と曲げる。その様は他の不可解な要素を消しにいくような、そんな演技にみえた。

メリーはそんな様子を心の内で面白げに眺める。

「それでは失礼します」

母親に引き連れられ、共に一礼し、車に乗り病院を去っていった。

道中、母はしきりに良かった、を連呼し、秋人はそれに合わせながら、心の中を探るように窓の外を見ていた。段々と見慣れた景色になり、我が家に辿り着く。感慨に浸る間もなく、自分の部屋に足を急ぐと、空を眺めながら試す――。

「おい」

『何?』

間髪入れずに返ってきた反応に、安堵したような落胆したような複雑な表情を浮かべ口をつむぐ。

『……何よ? 言いたい事があるなら言いなさいよ』

向こうの声は不満げに頭の中に響いてきた。

「病院の地縛霊とかじゃなかったか……」

『はぁ!? あんた今さら何言ってんの? 協力してくれんでしょ!? やっぱ無しとか言わせないから!』

凄い剣幕で責められ、頭の中にガンガンと響き渡る。雰囲気に流されてそれらしい事を言ってしまった心の内は、早くも怠け始めたのだった。

「うん。するよ、する……。とりあえず今日はいいだろ……」

ベッドにドサリと身を沈める。この瞬間に帰って来たと実感する心地好さ。目をつぶり、布団の柔らかさに身体を委ねる。

『怒るよ? てか怒ってる』

「ごめん」

しゃっきりと立ち上がる。立ち上がったがその力の行き場を考え、再びベッドに座り込んだ。

『ねぇ』

「まずは方法を考えよう。むやみに動くのは得策じゃない」

ごろんと一回転、布団の中にうずくまる。

『〜〜っ!! 秋人!! ふざけないでっ!』

思わずビックリして招き猫のような置物と化した時、隣のドアが勢いよく開く音がし、足音がこの部屋に駆け込んできた。

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