珈琲にはとびっきりのお砂糖を。
無糖か微糖か(1/6)
藤倉 理乃(フジクラ リノ)、16歳。
現在12時8分。
非常に迷っております。
「うーーーーーーむむむむ」
「さっさと決めろよ」
横から口を出すのは竹倉 昴(タケクラ スバル)、同じく16歳。
私の幼馴染であり、元彼であり、好きな人である。
元彼なのに今も好きというのはちょっとした理由がある。
付き合っていたのは中学の頃の一時期だけで、このことを高校の友達は誰も知らない。
昴はもう私のことを好きじゃないし、私が昴を好きでいることも誰にも話していない。
そしてこの先私が昴に好きだと伝えることもない。
…私は昴を幸せに出来ないから。
「本当優柔不断だよな、もう高校生なんだしいい加減直せよ」
「うるさいなー関係ないじゃん、あっち行ってろ」
「おまけに口が悪い、それでも女かよ」
「喧嘩売ってんの?」
キッと睨み付けても昴は怯む素振りを見せない。
「つーかさっさと決めろよ、珈琲ぐらい」
そう、現在私達が通う学校の自動販売機の前。
私、藤倉理乃は根っからの珈琲大好き人間。
そしてまさに今、微糖を買うか無糖を買うか超絶悩んでいるわけです。
「いつもブラック派なんだけど、たまに微糖が飲みたくなるんだよねー」
「どーでもいいわ、つーか微糖もブラックも変わんねぇだろ」
「いやいや全然違うからね?」
「どっちも苦ぇ」
昴は珈琲は好きじゃないらしく、実際飲んでるところをあまり見たことがない。
と言うか記憶に残っている内では一度も見たことがない。
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